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確定申告の修繕費を完全攻略!資本的支出との違いと正しい計上方法

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不動産をお持ちのオーナー様にとって、確定申告は毎年欠かせない大事な業務です。そのなかでも「修繕費」の扱いは特にややこしく、頭を悩ませた経験がある方も多いのではないでしょうか。

管理会社から届いた請求書を見て、「この工事は経費で落としていいの?」「資本的支出に当たるの?」と迷ってしまうケースも少なくありません。

この記事では、確定申告における修繕費の考え方を基本から丁寧に解説します。さらに、節税のカギとなる「資本的支出」との違いや、実際の工事ごとの判断ポイント、そして正しい計上のコツまで、わかりやすくまとめました。

読み終わるころには、修繕費の正しい判断基準が身につき、確定申告の不安もぐっと減るはずです。管理会社から届く請求内容を冷静にチェックできるようになり、税務調査でも自信をもって説明できるようになるでしょう。

 

この記事でわかること

この記事では、不動産オーナー様が確定申告で迷いやすい「修繕費」について、基本的な考え方から実務での判断方法までを解説します。修繕費と資本的支出の違い、判断の流れ、工事の種類ごとの扱い方、仕訳や計上のタイミング、税務調査での注意点などを総合的に学べます。

正しい知識を身につけることで、余計な税金の支払いを防ぎ、健全な経営とキャッシュフロー改善につなげることができます。

 

確定申告における修繕費の基本知識

確定申告における修繕費の基本知識の要約画像

確定申告では、経費を正しく計上することが節税の第一歩です。その中でも「修繕費」は発生頻度が高く、判断を間違えると大きな差が出る項目です。

ここでは、修繕費の基本的な定義や、経費として認められる範囲、そして混同しやすい「消耗品費」との違いをわかりやすく整理していきます。

修繕費とは

修繕費とは、所有している建物や設備を元の状態に戻すために使ったお金のことを指します。台風で壊れた屋根を直したり、退去後の部屋の壁紙を貼り替えたりといった費用がこれに当たります。

税務上、修繕費は「資産の価値を維持・回復するための支出」として、その年の経費に一括で計上できます。つまり、所得を減らす効果があり、節税にもつながるわけです。

一方、建物の価値を高めたり、機能を大きく向上させるような支出は「資本的支出」となり、減価償却で数年に分けて費用化する必要があります。大切なのは、「元に戻すための支出なのか」「新しい価値を付け加える支出なのか」を見極めることです。

修繕費として経費計上できる範囲

修繕費として認められるのは、資産の維持や原状回復に関する支出です。たとえば、次のようなケースが該当します。

 

    • ◾️給湯器やエアコンの修理費

    • ◾️外壁のひび割れ補修や雨漏り修理

    • ◾️退去後のクロスの貼り替えや床の補修、ハウスクリーニング

これらは、物件の価値を新しく高めるわけではなく、あくまで「現状を保つための費用」です。この範囲であれば、発生した年度の経費として計上できます。

また、工事が発生した際は、請求書や領収書をしっかり保管しておくことも大切です。どんな目的で支出したのかを後から説明できるようにしておくと、税務調査でも安心です。

修繕費と消耗品費の違い

修繕費と消耗品費はどちらも経費になりますが、判断の基準が異なります。消耗品費は「使い切るもの」、修繕費は「直すもの」と覚えるとわかりやすいです。

消耗品費の代表例は、事務用品や照明などの備品で、10万円未満または1年以内に使い切るようなものが対象です。一方、修繕費は、金額にかかわらず既存の資産を直すための支出が該当します。

たとえば、事務所の電球を交換するなら消耗品費、設置済みのエアコンを修理するなら修繕費です。支出の性質を意識して区分することで、経理の整合性が保たれ、後の申告もスムーズになります。

 

修繕費と資本的支出の判定基準

不動産経営で特に迷いやすいのが、「修繕費」と「資本的支出」のどちらに当たるかという判断です。この2つは見た目が似ていても、処理方法がまったく違います。ここを正しく区別できるかどうかで、節税効果にも大きな差が出ます。

資本的支出の定義と特徴

資本的支出とは、建物や設備の価値を高めたり、耐用年数を延ばしたりするための支出のことです。修繕費が「壊れた部分を直して元に戻すためのお金」だとすれば、資本的支出は「さらに良くするためのお金」です。

たとえば、古い木製の窓をアルミサッシに交換して断熱性能を上げる、和室を洋室にリフォームする、屋根材をより高耐久な素材に張り替えるといったケースが挙げられます。こうした支出は長期的に効果が続くため、その年に一括で経費にせず、建物の取得価額に加えて減価償却で数年に分けて費用化します。

資本的支出は「投資に近い支出」と考えるとイメージしやすいでしょう。未来の収益を生むためにお金を使っているからこそ、その効果を複数年で計上するわけです。

修繕費との見分け方の考え方

修繕費と資本的支出を見分けるには、工事の「目的」と「効果」に注目するのが一番わかりやすいです。この2つを整理して考えると、どちらの扱いが正しいかが自然と見えてきます。

 

目的から考える違い

まずは「なぜその工事を行ったのか」という目的に目を向けましょう。壊れた箇所を直したり、古くなった部分を元の状態に戻したりする工事は、基本的に修繕費にあたります。一方で、これまでになかった機能を追加したり、見た目や性能をグレードアップさせたりする場合は、資本的支出と考えられます。

たとえば、古くなった給湯器を同等品に交換するなら修繕費ですが、追い焚き機能付きの新型に入れ替える場合は、設備の価値を高めているため資本的支出になります。

 

効果の期間から考える違い

次に、「どのくらいの期間、その効果が続くのか」という視点も大切です。修繕費は、効果が1年程度で終わるような短期的な維持・補修を指します。これに対して、資本的支出は、建物や設備の性能を高め、その効果が何年も続くような工事が該当します。

たとえば、同じ外壁塗装でも、以前と同じ塗料で塗り替えるなら修繕費に含まれます。しかし、遮熱性や防水性を強化した高級塗料を使って耐用年数を延ばす場合は、長期的な効果があるため資本的支出とみなされます。

 

実際の判断で意識しておきたいこと

修繕費と資本的支出の判断では、金額よりも工事の性質が重視されます。見た目が似ていても、目的や内容が違えば扱いは変わります。たとえば、壊れた箇所を直すだけなら修繕費ですが、使いやすさを求めて全面的にリフォームする場合は資本的支出です。

また、見積書や契約書に「修理」「補修」「交換」といった言葉が多ければ修繕費、「リフォーム」「改良」「新設」と書かれていれば資本的支出の可能性が高いと考えられます。このように、目的と効果の両面から確認することが正しい判断への近道です。迷ったときは、工事内容の資料を税理士に見てもらうと安心です。

判定フローチャートと具体的な判断基準

国税庁の通達では、修繕費と資本的支出の区分を判断するための基準が示されています。細かい要件はありますが、実務では次のような流れで判断するのが一般的です。

まず、その工事の金額が20万円未満であれば、原則として修繕費として処理して問題ありません。20万円以上の場合は、その工事が「おおむね3年以内の周期で繰り返し行われるものか」を確認します。定期的に行う防水や外壁補修などは、金額が大きくても修繕費として認められることがあります。

それでも判断が難しい場合は、工事内容を見て「価値を高めたか」「耐用年数を延ばしたか」で判定します。この2つのどちらかに当てはまるなら資本的支出、それ以外なら修繕費という整理が基本です。迷ったときは、国税庁のタックスアンサーNo.5402や税理士の意見を参考にしましょう。

出典: 国税庁|No.5402 修繕費とならないものの判定

 

グレーゾーンと金額基準の特例

ここからは、実際の現場で起こりやすい“グレーなケース”や、“少額工事の特例”について解説します。理論上の区別を理解していても、実務では判断が難しい場面が多いものです。こうした場合に役立つ柔軟な考え方を押さえておきましょう。

グレーゾーンをどう扱うか

たとえば退去後の内装工事で、原状回復と同時にデザインを良くするリフォームを行うケース。このように修繕と改良が混在すると、どちらに計上するか迷いやすくなります。そんなときに使えるのが「少額特例」です。判断があいまいな部分の金額が60万円未満、または建物取得価額の10%以内なら修繕費として扱ってOKです。

ただし、明らかに資本的支出とわかるものには使えません。「迷ったときだけ使える救済ルール」と覚えておきましょう。

金額による判定の特例

税法では、少額の支出であれば修繕費として処理できる特例があります。もともと資本的支出にあたる内容でも、金額が小さい場合は経費計上を認める仕組みです。基準は2つあります。1つ目は「支出額が60万円未満の場合」。この範囲なら、多少のグレードアップを含んでいても修繕費として処理できます。

2つ目は「支出額が建物の取得価額の10%以内の場合」。たとえば、取得価額1,000万円の建物に80万円使った場合、60万円を超えていても10%(100万円)以内なので修繕費でOKです。

この特例は2022年の税制改正で明確になり、多くのオーナーが活用しています。見積もりの段階で金額を確認し、当てはまる場合は積極的に使いましょう。減価償却を避けられ、手元資金を早めに動かせる点がメリットです。

 

工事別の修繕費・資本的支出の判定事例

修繕費と資本的支出の違いは理解できても、実際の工事で迷う場面は少なくありません。どこまでが経費で、どこからが資産計上になるのかは工事の内容によって変わります。

ここでは、不動産オーナーが特に判断に迷いやすい「外壁・屋根の工事」「設備交換」「内装・原状回復」の3つを例に、それぞれの考え方と注意点をわかりやすく整理します。

外壁塗装と屋根修繕の判定

外壁や屋根の工事は金額も大きくなりやすく、判断に迷う代表的なケースです。 塗装や補修を同じグレードの素材で行うなら、修繕費として経費計上できます。しかし、断熱・遮熱効果の高い高級塗料を使用したり、建物全体の防水性を大きく高める工事を行う場合は、資本的支出とみなされる可能性が高くなります。

見積書を確認するときは、「どんな目的で」「どんな材料を使うのか」を明確にしておくことが大切です。

設備交換・更新工事の判定

給湯器やエアコン、キッチンなどの設備交換も、修繕費と資本的支出の境目になりやすい部分です。同等の機能を持つ製品に交換するだけなら修繕費として扱えます。一方で、追い焚き機能を追加したり、IHコンロに変えるなど性能を高める場合は、資本的支出になるケースが多いです。

設備を選ぶときは、修繕費として処理したいのか、資本的支出として資産計上するのか、目的を意識しておくと判断しやすくなります。

内装工事と原状回復の判定

退去後の原状回復工事は、基本的に修繕費として処理できます。壁紙の張り替えやフローリングの補修、クリーニングなどは「元に戻すための工事」だからです。ただし、和室を洋室に変えたり、間取りを変えたり、グレードの高い素材に一新した場合は、資本的支出と見なされます。

見積書に「工事一式」としか書かれていない場合は、どこまでが修繕でどこからが改良なのか、内訳をしっかり確認しましょう。

 

確定申告での修繕費の計上方法

確定申告での修繕費の計上方法の要約画像

修繕費は正しく処理すれば節税につながる重要な経費です。けれども、「どのタイミングで」「どの勘定科目で」計上すべきかを理解していないと、せっかくの経費が認められなかったり、資本的支出と誤って処理してしまうリスクもあります。

この章では、個人オーナーと法人の違いを踏まえながら、修繕費の正しい計上タイミングや仕訳の考え方、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。初めての確定申告でも迷わないよう、実務の流れをイメージしながら確認していきましょう。

修繕費を計上するタイミング

修繕費は「支出した時点」ではなく、「工事が完了した時点」で計上するのが原則です。たとえば12月に工事が終わり、支払いが翌年1月の場合でも、工事完了日が12月ならその年の経費に含めます。

逆に、着手金を先に支払っていても、工事が翌年に持ち越されていれば翌年分の経費です。このように「お金を払った時期」と「工事が完了した時期」がズレるケースでは、領収書だけでなく工事完了日を記録しておくと安心です。

勘定科目と仕訳の考え方

修繕費は、個人の場合「不動産所得の必要経費」として「修繕費」科目で処理します。法人の場合も同じく「修繕費」で処理しますが、建物や設備に関する内容であれば「建物付属設備修繕費」として細かく分けてもOKです。

たとえば個人オーナーが10万円の屋根補修をした場合、仕訳は「修繕費 100,000円/現金(または普通預金)100,000円」。支払い方法に応じて左側(借方)と右側(貸方)を整理します。経理ソフトを使う場合は、「修繕費」カテゴリーを選べば自動的に反映されるため、複雑な仕訳入力は不要です。

管理会社からの修繕費明細の確認ポイント

修繕費と資本的支出を混同して処理してしまうと、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。特に、金額が大きい工事や、見積書に「改修」「リフォーム」などの文言が含まれる場合は要注意です。

また、複数年にまたがる大規模工事の場合、経費計上の時期を誤ると翌年の所得計算にも影響します。見積書・契約書・工事完了報告書をまとめて保管し、どの年の経費なのかを明確にしておきましょう。もし判断に迷うときは、税理士に「これは修繕費として処理して問題ないですか?」と確認するのがおすすめです。ちょっとした確認で、後々のトラブルを防げます。

 

修繕費に関する税務上の注意点

修繕費は節税につながる有効な手段ですが、扱いを誤ると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。正しく申告を終えるためには、税務署がどこを見ているのか、どんな点で誤解されやすいのかを知っておくことが大切です。

ここでは、調査で注意されやすいポイントや、証拠書類の保管方法、申告前に確認したいチェック項目を整理します。基本を押さえておけば、安心して確定申告を乗り越えられるはずです。

税務調査で指摘されやすいポイント

税務調査で最も多いのが「資本的支出との区別があいまいなまま修繕費として処理しているケース」です。調査官は、経費の中でも金額が大きく判断が分かれやすい項目を重点的に確認します。

たとえば、100万円を超えるような大規模修繕や、原状回復のついでにグレードアップした工事などは要注意。また、自宅兼事務所などの場合、事業部分と私的部分の按分が適切かどうかも見られます。

判断を誤ると「本来は資産計上すべき支出を一度に経費化した」として修正を求められる可能性があります。高額な工事ほど、契約書や見積書、工事前後の写真などをそろえ、「なぜ修繕費と判断したのか」を説明できる状態にしておきましょう。迷う場合は、事前に税理士へ相談するのが安全です。

適切な証拠書類の保管方法

修繕費を経費として認めてもらうためには、証拠書類の保管が欠かせません。たとえ実際に費用を支払っていても、書類がなければ経費として認められないことがあります。

保存すべき書類は、見積書・請求書・領収書の3点に加え、工事請負契約書や工事前後の写真もあると万全です。 写真は、原状回復か改良かを証明するうえでとても有効な資料になります。

整理方法は、物件ごと・年度ごとにクリアファイルやバインダーでまとめるのが基本です。青色申告なら7年、白色申告なら5年が保管期間。スキャナ保存も可能ですが、原本もすぐ取り出せる状態にしておくと安心です。

日頃から書類を整えておくことが、後のトラブル防止につながります。

申告ミスを防ぐチェックリスト

確定申告前は忙しく、思わぬ見落としが起こりやすい時期です。申告書を提出する前に、次のポイントを一度見直しておきましょう。

まず、「20万円以上の支出は修繕費か資本的支出か、根拠を明確にできているか」。次に、「60万円未満または取得価額の10%以内の特例に当てはまらないか」。さらに、「請求書・領収書はすべて揃っているか」「管理会社の請求に“工事一式”などの曖昧な記載がないか」。最後に、「私的な支出が経費に紛れていないか」を確認しておきましょう。

これらを一つずつ丁寧に確認するだけでも、申告ミスの多くは防げます。この“ひと手間”が、後々の追徴課税や延滞税を避ける最も確実な対策になります。

 

まとめ

修繕費は、上手に扱えば節税効果の大きい経費です。しかし、資本的支出との違いを理解せずに処理してしまうと、思わぬ修正や追徴課税につながることもあります。大切なのは、「目的」「金額」「内容」を冷静に見極めること。 迷ったときは特例を活用したり、税理士に相談したりしながら、根拠を持って判断するようにしましょう。

また、領収書や見積書などの証拠書類を整理しておくことも、税務上の安心材料になります。日々の小さな管理が、将来のリスクを防ぎ、経営を安定させる力になります。正しい知識と準備を味方に、安心して確定申告を迎えましょう。