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マスターリースの仕組みとは?サブリースとの違い・メリット・デメリットと契約前の注意点

マスターリースの仕組みとは?サブリースとの違い・メリット・デメリットと契約前の注意点のアイキャッチ

賃貸物件を所有するオーナーにとって、管理方式の選択は収益だけでなく、将来のリスクにも大きく関わります。マスターリースという言葉を耳にしたことはあっても、その仕組みや契約上の注意点まで正しく理解している方は多くありません。

近年、サブリース契約をめぐるトラブルや相談が増えたことを背景に、賃貸住宅の管理や転貸に関するルールが見直されてきました。2020年に公布された賃貸住宅管理業法では、オーナーとサブリース事業者との契約について、重要事項の説明義務や誇大な勧誘の禁止などが定められています。

こうした制度の整備により、マスターリース契約はメリットだけで判断するものではなく、契約内容を理解したうえで慎重に検討すべき契約形態として位置付けられるようになっています。

記事を読み終える頃には、マスターリース契約が本当に自分の物件に合っているのか、管理委託を含めてどの管理方式を選ぶべきかを、冷静に判断できるようになるでしょう。管理会社の対応に不満を感じている方や、これから賃貸経営を始める方は、ぜひ最後までお読みください。

 

この記事でわかること

本記事では、マスターリース契約について体系的に理解できる内容をまとめています。具体的には以下のポイントを詳しく解説していきます。

まず、マスターリース契約の基本的な定義と仕組みについて説明します。マスターリースとは何か、どのような契約形態があるのかを明確にすることで、今後の判断材料となる基礎知識を身につけることができます。

次に、サブリースや管理委託との違いをわかりやすく整理します。これらの用語は混同されやすいですが、契約形態や収益構造、リスク負担の考え方が大きく異なります。違いを正確に理解することで、自分に合った管理方式を選べるようになります。

さらに、マスターリース契約のメリット・デメリットを、実際の契約や運用の現場でよく問題になるポイントを踏まえて解説します。空室リスクの軽減や管理の手間削減といったメリットがある一方で、賃料が完全に保証されないことや契約の自由度に制約があるなど、見落とされやすい注意点も整理します。

最後に、契約時の注意点や、管理委託という現実的な代替案についても触れます。マスターリースありきではなく、複数の選択肢を比較したうえで判断できるよう、実践的な視点で解説します。

 

マスターリースとは

マスターリースとはの要約画像

マスターリースは、不動産オーナーが物件を管理会社に一括で貸し出す契約形態です。この仕組みを理解することが、賃貸経営の選択肢を広げる第一歩となります。

マスターリースという言葉は「master(主要な)」と「lease(賃貸借)」を組み合わせた英語です。日本の不動産業界では、オーナーと管理会社(サブリース会社)の間で結ばれる賃貸借契約を指します。この契約により、オーナーは物件全体を管理会社に貸し出し、管理会社はその物件を入居者に転貸します。

マスターリース契約の定義

マスターリース契約とは、不動産オーナーが所有する賃貸住宅を事業者に貸し出し、その事業者が第三者へ転貸することを前提として結ばれる賃貸借契約です。実務では、オーナーとサブリース事業者の間で締結されるこの契約を、マスターリース契約と呼ぶことが一般的です。

法律上は、こうした契約は特定賃貸借契約として整理されています。賃貸住宅管理業法では、契約前の重要事項説明や誇大な勧誘の禁止などが定められ、オーナー保護の仕組みが整えられました。

ただし、制度が整備されたからといって、オーナーにとって常に有利な契約になるわけではありません。実際の契約内容によっては、賃料の見直し条件や解約条項、修繕負担の範囲などが管理会社側に有利に設定されているケースも見られます。

特に注意したいのは、契約書の文言です。一見すると賃料が安定しているように見えても、一定期間経過後に賃料の再協議ができる条項が含まれていたり、オーナー側からの中途解約が事実上困難な内容になっていることがあります。こうした条件は、契約前に十分な説明を受けていなければ見落とされがちです。

マスターリース契約は、単なる管理委託とは異なり、管理会社自身が借主となる賃貸借契約です。その性質上、契約内容しだいではオーナーの裁量が大きく制限される可能性があります。定義だけで判断せず、実際の契約条件まで確認することが重要です。

マスターリース契約の仕組み

この賃料は「保証賃料」や「転貸賃料」と呼ばれ、一般的には入居者が支払う家賃の80〜90%程度に設定されるケースが多いとされています。これは、管理会社が家賃の10〜20%前後をマージンとして差し引く構造になっているためです。

ただし、この割合は一律ではなく、物件の立地や築年数、市況、管理会社の方針によって大きく異なります。業界では、高い保証賃料を提示する契約ほど、将来的な賃料見直しの余地が大きくなる傾向があるとも言われています。そのため、提示された数字だけで判断しないことが重要です。

管理会社は借り受けた物件を入居者に転貸します。入居者は管理会社と賃貸借契約を結び、管理会社に対して家賃を支払います。管理会社は入居者から受け取る家賃と、オーナーに支払う保証賃料の差額を利益として得る仕組みです。この差額が管理会社の収益源となります。

例えば、相場家賃が月10万円の物件をマスターリースで借り上げた場合を考えてみましょう。管理会社がオーナーに支払う保証賃料が8万5千円であれば、管理会社の粗利は1万5千円となります。この差額の中から、管理会社は入居者募集費用や建物管理費用などを賄います。

マスターリースの契約形態

マスターリース契約には大きく分けて「賃料固定型」と「実績連動型」の2つの契約形態があります。それぞれの特徴を理解することで、自分に合った契約を選ぶことができます。

賃料固定型は、入居状況に関わらず毎月一定の保証賃料がオーナーに支払われる形態です。空室が発生しても保証賃料は変わらないため、収入の安定性が最大のメリットとなります。ただし、保証賃料は相場より低めに設定されるため、満室時の収益は通常の管理委託より少なくなる傾向があります。

実績連動型は、実際の入居状況や家賃収入に応じて保証賃料が変動する形態です。入居率が高ければオーナーの収入も増えますが、空室が増えると収入が減少するリスクがあります。この形態では、管理会社の手数料として家賃収入の一定割合が差し引かれます。

どちらの契約形態を選ぶかは、オーナーのリスク許容度や物件の特性によって異なります。立地が良く空室リスクが低い物件であれば実績連動型の方が有利になる可能性があります。一方、空室リスクが気になる物件であれば賃料固定型で安定収入を確保するという選択肢もあります。契約形態の違いを理解した上で、自分の状況に合った方を選ぶことが大切です。

 

マスターリースとサブリース・管理委託の違い

マスターリースとサブリース・管理委託の違いの要約画像

マスターリースに関連する用語として「サブリース」や「管理委託」がありますが、これらは混同されやすい概念です。それぞれの違いを正確に理解することが、適切な管理方式を選ぶ上で欠かせません。

これらの用語は不動産業界でも曖昧に使われることがあり、一般の方が混乱するのは当然のことです。ここでは、契約の当事者・契約形態・収益構造・リスク負担の4つの観点から、違いをわかりやすく整理します。

マスターリースとサブリースの違い

マスターリースとサブリースは、同じ仕組みを異なる視点から表現した言葉です。マスターリースは「オーナーと管理会社の間の賃貸借契約」を指し、サブリースは「管理会社と入居者の間の転貸借契約」を指します。つまり、一つのスキームの中で、契約の当事者によって呼び方が変わるのです。

オーナーの立場から見ると、管理会社に物件を貸し出す契約がマスターリース契約です。管理会社の立場から見ると、オーナーから借りた物件を入居者に転貸する行為がサブリース(又貸し)となります。このため、「サブリース契約」という表現は、管理会社と入居者の契約を指す場合と、マスターリース契約全体を指す場合があり、文脈によって意味が異なります。

一般的な不動産会社の広告やWebサイトでは、「サブリース」という言葉がマスターリース契約全体を指して使われることが多いです。「サブリース契約」「一括借り上げ」「家賃保証」などの表現は、いずれもマスターリース契約を意味していると考えてよいでしょう。用語の使い方に厳密なルールがないため、契約内容を確認する際は、具体的な条件をしっかり確認することが重要です。

賃貸住宅管理業法では、オーナーとサブリース業者の間の契約を「特定賃貸借契約」と定義しています。この法律に基づき、サブリース業者には重要事項説明義務や誇大広告の禁止などが課されています。法的な保護を受けるためにも、契約前に管理会社が法令を遵守しているか確認することが大切です。

マスターリースと管理委託の違い

マスターリースと管理委託は、契約形態が根本的に異なります。マスターリースは「賃貸借契約」であるのに対し、管理委託は「委任契約(準委任契約)」です。この違いにより、オーナーの権利義務や収益構造が大きく変わってきます。

管理委託の場合、オーナーが受け取る家賃収入から管理会社へ管理手数料を支払う形になります。管理手数料の水準は物件や契約内容によって異なりますが、実務上は家賃収入の5%前後がひとつの目安とされることが多いです。

そのため、満室時の収益性を重視する場合は、家賃収入から一定割合の手数料を支払う管理委託の方が、マスターリースより高くなる傾向があります。一方で、空室が発生した場合のリスクはオーナー自身が負う点には注意が必要です。

マスターリース契約では、オーナーと入居者の間に契約関係がありません。オーナーにとっての「借主」は管理会社であり、入居者との契約は管理会社が行います。このため、入居者の選定や家賃設定について、オーナーの意向が反映されにくいという特徴があります。

空室が発生した場合のリスク負担も異なります。管理委託では空室期間の家賃収入はゼロになりますが、マスターリース(賃料固定型)では保証賃料が支払われます。ただし、マスターリースの保証賃料は、管理会社のマージンを差し引いた水準で設定されるため、周辺相場より低めになるケースが一般的です。その結果、満室時の収益は管理委託の方が高くなる傾向があります。収益性と安定性のどちらを重視するかで、選ぶべき管理方式は変わってきます。

 

マスターリース契約のメリット

マスターリース契約には、管理の負担を軽減できるなど一定の利点があります。ただし、すべてのオーナーにとって有利な契約とは限らず、契約条件や物件の状況によっては注意が必要なケースもあります。

実際に、行政機関や消費者相談窓口では、賃料の見直しや解約条件を十分に理解しないまま契約したことで、想定外の不利益を被ったという相談も見られます。メリットだけで判断せず、リスクも含めて確認することが重要です。

空室リスク・滞納リスクの軽減

マスターリース契約の最大のメリットは、空室や家賃滞納のリスクを管理会社に転嫁できる点です。賃料固定型のマスターリース契約であれば、入居状況に関わらず毎月一定の保証賃料を受け取ることができます。

賃貸経営において空室は最も大きなリスクの一つです。国土交通省の「住宅市場動向調査」によれば、全国の賃貸住宅の空室率は年々上昇傾向にあり、特に地方都市では深刻な問題となっています。空室が発生すると家賃収入がゼロになるだけでなく、次の入居者を募集するための広告費や原状回復費用も必要になります。

家賃滞納も賃貸オーナーを悩ませる問題です。滞納が発生すると督促対応に時間と労力がかかり、最悪の場合は法的手続きが必要になることもあります。マスターリース契約では、入居者との賃貸借契約は管理会社が当事者となるため、滞納対応も管理会社の責任で行われます。オーナーは滞納の有無に関わらず、保証賃料を受け取ることができます。

ただし、後述するように保証賃料は永久に固定されるわけではありません。契約期間中に賃料の見直しが行われる可能性があることは理解しておく必要があります。それでも、毎月の収入が予測可能になることで、ローン返済計画や将来の資金計画を立てやすくなるメリットは大きいと言えるでしょう。

賃貸管理の手間がかからない

マスターリース契約では、賃貸経営に関わるほとんどの業務を管理会社に任せることができます。入居者募集から退去時の精算まで、日常的な管理業務はすべて管理会社が対応するため、オーナーの負担は大幅に軽減されます。

具体的には、入居者の募集・審査、賃貸借契約の締結、家賃の集金、入居者からのクレーム対応、設備の故障対応、退去立会い、原状回復工事の手配、敷金の精算など、多岐にわたる業務を管理会社が代行します。本業が忙しいサラリーマンオーナーや、遠方に物件を持つオーナーにとって、この手間の削減は非常に大きなメリットとなります。

特に入居者からのクレーム対応は、精神的な負担が大きい業務です。深夜の設備トラブルや近隣トラブルなど、いつ発生するかわからない問題に対応しなければなりません。マスターリース契約では、これらの対応も管理会社が24時間体制で行うことが一般的です。オーナーは直接クレームを受けることなく、安心して賃貸経営を続けることができます。

複数の物件を所有している場合は特に、管理の一元化というメリットも得られます。物件ごとに異なる管理会社と契約する手間がなくなり、窓口が一本化されることで情報管理も効率的になります。

契約手続きがシンプル

マスターリース契約のもう一つのメリットは、オーナーにとっての契約手続きがシンプルになる点です。オーナーが契約を結ぶ相手は管理会社だけであり、個々の入居者と直接契約を結ぶ必要がありません。

管理委託の場合、入居者が入れ替わるたびにオーナーが賃貸借契約を締結する必要があります。契約書の作成、重要事項の確認、署名捺印など、入居者の数だけ手続きが発生します。特に複数の物件を所有している場合、これらの作業は相当な時間と労力を要します。

マスターリース契約では、オーナーは管理会社との1本の契約を管理するだけで済みます。入居者との契約は管理会社が行うため、入居者が入れ替わってもオーナーの契約関係に変更はありません。書類管理の負担が減り、契約に関するトラブルのリスクも軽減されます。

また、確定申告の際にも、収入の計算がシンプルになるメリットがあります。管理委託では入居者ごとの家賃収入を把握する必要がありますが、マスターリースでは管理会社から受け取る保証賃料だけを計上すれば済みます。経理処理の手間も削減できる点は、忙しいオーナーにとって見逃せないポイントです。

相続税の節税効果

マスターリース契約を検討する理由として、相続を見据えた資産整理の一環として考えられるケースもあります。賃貸中の不動産は、評価方法によって相続税評価額が変わることがあるためです。

ただし、相続税の評価は物件の状況や契約内容、相続時点の実態によって判断されます。マスターリース契約を結んでいるからといって、必ずしも評価額が下がるとは限りません。また、節税のみを目的として契約することは、思わぬリスクにつながる可能性もあります。

相続を意識して管理方式を選ぶ場合は、契約形態だけで判断せず、税理士などの専門家に相談したうえで総合的に検討することが重要です。

 

マスターリース契約のデメリット

マスターリース契約にはメリットがある一方で、見過ごせないデメリットも存在します。契約前にこれらのリスクを十分に理解しておくことが、後悔のない判断につながります。

国民生活センターには、サブリース契約に関する相談が毎年数百件寄せられています。その多くは「賃料が減額された」「解約したいのにできない」といった内容です。以下では、マスターリース契約の主なデメリットを詳しく解説します。

賃料が完全保証されない

マスターリース契約の最大の落とし穴は、保証賃料が永久に固定されるわけではないという点です。多くの契約では、2~3年ごとに賃料の見直し条項が設けられており、市況の変化に応じて保証賃料が減額される可能性があります。

借地借家法第32条には「借賃増減請求権」が定められており、経済状況の変動などにより賃料が不相当になった場合、当事者は賃料の増減を請求できるとされています。この規定はマスターリース契約にも適用されるため、たとえ契約書に「賃料は○年間変更しない」と記載されていても、法的には賃料減額請求を完全に排除することはできません。

過去には、契約当初の保証賃料から数年後に20~30%もの減額を求められたケースも報告されています。特に新築物件では、当初は高めの賃料設定で契約し、数年後に大幅な減額を行う「当初賃料設定型」と呼ばれる手法がトラブルの原因となることがあります。

契約時には「30年一括借り上げ」「家賃保証」といった魅力的な言葉に惹かれがちですが、保証賃料が見直される可能性があることを十分に理解しておく必要があります。契約書の賃料見直し条項を必ず確認し、どのような条件で減額が行われるのかを把握してから契約することが重要です。

中途解約の制限

マスターリース契約は、オーナー側からの中途解約が難しいという特徴があります。借地借家法の規定により、オーナー(貸主)から契約を終了させるには「正当事由」が必要とされ、単に「他の管理会社に変えたい」という理由だけでは解約できません。

借地借家法第28条では、賃貸人から契約の更新拒絶や解約申入れを行う場合、正当事由がなければ認められないと定められています。正当事由の有無は、建物の使用を必要とする事情、建物の利用状況、賃貸借に関する従前の経過、立退料の提示などを総合的に考慮して判断されます。

一方、管理会社(借主)側からの解約は比較的容易に行えることが多いです。多くのマスターリース契約では、管理会社は3~6ヶ月前の予告をもって解約できる条項が設けられています。この点は、オーナーにとって不利な契約条件と言えます。

契約期間中に管理会社の対応に不満を感じても、簡単には解約できないことを理解しておく必要があります。契約前に解約条件を十分に確認し、中途解約が必要になった場合の対応についても管理会社に確認しておくことをお勧めします。状況によっては、立退料を支払って合意解約するという選択肢もありますが、相応の費用負担が発生することを覚悟しなければなりません。

経営方針の自由度が低い

マスターリース契約を締結すると、賃貸経営に関するオーナーの裁量が制限されることがあります。入居者の選定基準や家賃設定、リフォームの内容など、経営判断の多くを管理会社に委ねることになるためです。

通常の管理委託であれば、入居審査の基準をオーナーが決めることができます。例えば「ペット不可にしたい」「学生限定にしたい」といった条件を設定することが可能です。しかし、マスターリース契約では入居者との契約当事者は管理会社であり、オーナーの意向が反映されにくくなります。

家賃設定についても同様です。マスターリース契約では、管理会社が市場調査に基づいて家賃を決定します。オーナーが「もう少し高く貸したい」と思っても、管理会社の方針に従わざるを得ないケースがあります。もちろん、保証賃料の水準に影響するため、協議の余地はありますが、最終的な判断は管理会社に委ねられることが多いです。

大規模修繕やリフォームについても、オーナーの承諾なく管理会社の判断で実施されることがあります。契約内容によっては、修繕費用の負担がオーナーに求められることもあるため、契約前に修繕に関する取り決めを確認しておくことが重要です。自分の物件をどのように経営したいか明確なビジョンを持っているオーナーにとっては、この自由度の低さはデメリットになり得ます。

敷金・礼金を受け取れない

マスターリース契約では、入居者から支払われる敷金や礼金はオーナーではなく管理会社が受け取ることが一般的です。これらの収入は、通常の賃貸経営では重要な収益源となりますが、マスターリース契約ではオーナーの手元に入りません。

敷金は入居者の退去時に原状回復費用を差し引いて返還されるものですが、管理会社が受け取る形式では、その運用益や一部未返還分も管理会社の収入となります。礼金に至っては、入居のお礼として支払われる費用であり、返還義務のない収入です。これらを受け取れないことは、オーナーにとって経済的なデメリットと言えます。

特に入居者の入れ替わりが頻繁な物件では、敷金・礼金の累計額は相当な金額になります。例えば、礼金1ヶ月分が設定されている物件で年間に3件の入退去があれば、家賃10万円の場合は年間30万円もの収入機会を逃すことになります。

この点は契約形態によって異なることもあるため、契約前に敷金・礼金の取り扱いについて確認することが重要です。一部の契約では、礼金の一部がオーナーに還元される条件が設けられていることもあります。また、更新料についても同様に、誰が受け取るのかを明確にしておく必要があります。保証賃料だけを見て契約を判断するのではなく、総合的な収支を把握することが大切です。

 

マスターリース契約の注意点

マスターリース契約を検討する際には、法規制の内容や契約条件について十分に理解しておく必要があります。トラブルを未然に防ぐための注意点を確認しましょう。

2021年に施行された賃貸住宅管理業法により、サブリース業者への規制が強化されました。この法律を理解し、信頼できる管理会社を選ぶことが、安全なマスターリース契約の第一歩となります。

賃貸住宅管理業法による規制

2021年6月に全面施行された「賃貸住宅管理業法」は、マスターリース契約に関するさまざまな規制を設けています。この法律を理解しておくことで、悪質な業者からのトラブルを回避できる可能性が高まります。

まず、サブリース業者は契約締結前に重要事項を書面で説明することが義務付けられました。説明すべき事項には、保証賃料の額・支払い方法・見直しの時期・条件、契約期間・更新・解約に関する事項、転借人への原状回復や維持保全の責任分担などが含まれます。オーナーはこの説明を受ける権利があり、不明点は遠慮なく質問すべきです。

また、「家賃保証」「空室保証」などの表現で誇大広告を行うことが禁止されました。将来にわたって賃料が変わらないかのような誤解を招く表現や、入居者の有無に関わらず家賃が支払われることを過度に強調する広告は法律違反となります。広告を見て「うまい話だ」と感じたら、実際の契約条件を慎重に確認する必要があります。

さらに、200戸以上の物件を管理するサブリース業者は、国土交通大臣への登録が義務付けられています。登録業者であることは最低限の信頼性の担保になりますが、登録しているからといって必ずしも優良業者とは限りません。登録番号を確認した上で、実績や評判も合わせて調査することをお勧めします。

契約内容の定期的な見直し

マスターリース契約を締結した後も、契約内容を定期的に見直すことが重要です。市況の変化や管理会社の対応状況に応じて、契約条件の改善を求めることも検討すべきです。

多くのマスターリース契約では、2~3年ごとに賃料の見直しが行われます。この機会に、保証賃料だけでなく、管理サービスの品質や契約条件全体を点検することをお勧めします。管理会社から一方的に減額を求められた場合でも、周辺相場や物件の状況を自分でも調査し、適正な水準かどうかを判断する材料を持つことが大切です。

定期的に物件を訪問し、建物の状態や共用部分の清掃状況を確認することも重要です。管理会社に任せきりにしていると、メンテナンスが不十分になっていても気づかないことがあります。物件の価値を維持するためには、オーナー自身も定期的にチェックする姿勢が必要です。

入居者の満足度も間接的に確認できると良いでしょう。入居者が退去する際にその理由を把握したり、ネット上の口コミを確認したりすることで、管理会社の対応品質を評価できます。入居者が定着しない物件は、管理に問題がある可能性があります。改善が見られない場合は、契約解除も視野に入れた交渉が必要になるかもしれません。

サブリース会社の選び方

マスターリース契約は、仕組みや契約内容を十分に理解しないまま締結すると、後々トラブルに発展しやすい契約形態です。そのため、基本的には慎重に検討すべき契約であり、積極的におすすめできるものではありません

それでもマスターリース契約を検討する場合は、契約内容だけでなく、サブリース会社自体の信頼性を必ず確認する必要があります。まず、賃貸住宅管理業者として国土交通大臣への登録を行っているかを確認しましょう。登録業者は国土交通省のホームページで検索でき、登録番号が付与されていることは、一定の基準を満たしていることの最低条件といえます。

次に、財務状況や経営の安定性も重要な判断材料です。サブリース会社が倒産した場合、保証賃料の支払いが滞るリスクがあります。上場企業や大手不動産会社のグループ会社であっても絶対に安全とは言い切れませんが、中小規模の会社の場合は特に慎重な見極めが必要です。可能であれば、決算情報や帝国データバンクなどの企業情報を確認しておきましょう。

また、実績や評判についても確認が欠かせません。管理戸数や管理歴、既存オーナーの声などを調べることで、会社の実態が見えてきます。契約を急かしたり、メリットばかりを強調してデメリットを十分に説明しない会社には注意が必要です。不安や疑問が残る場合は、その時点で契約を見送る判断も重要です。

マスターリース契約を選ぶかどうかは、最終的にはオーナー自身の判断になります。ただし、「よく分からないけれど勧められたから契約する」という姿勢は、最もリスクが高い選択だと言えるでしょう。

 

管理委託という現実的な代替案

マスターリース契約には一定のメリットがある一方で、収益性や契約の自由度に制約があることから、すべてのオーナーに適した管理方式とは言えません。そうした中で、多くのオーナーにとって現実的な選択肢となるのが「管理委託」です。

管理委託では、オーナーが入居者との賃貸借契約の当事者となり、管理会社には募集や家賃管理、入居者対応などの業務を委託します。管理手数料は家賃収入の5%前後がひとつの目安とされており、満室時の収益性を維持しやすい点が特徴です。

また、契約の自由度が高く、将来的に管理会社を変更したり、物件を売却・自己使用したりする判断もしやすくなります。空室リスクはオーナーが負うことになりますが、その分、家賃設定や入居者選定に自分の意向を反映できるため、物件の競争力を活かした運営が可能です。

マスターリースと管理委託のどちらが正解というわけではありませんが、収益性・自由度・将来の選択肢を重視する場合には、管理委託を前提に検討した上で、必要に応じてマスターリースを比較するという順序で考えることが、リスクを抑えるうえでも有効と言えるでしょう。

関連記事:不動産管理会社とは?業務内容・費用・選び方をオーナー目線で解説

 

まとめ

マスターリース契約は、物件を管理会社に一括で貸し出すことで、空室リスクや管理の手間を軽減できる仕組みです。一方で、保証賃料は相場より低めに設定されることが多く、契約の自由度や収益性には一定の制約がある点も理解しておく必要があります。

特に注意すべきなのは、「家賃保証」という言葉の印象とは異なり、保証賃料が将来にわたって固定されるわけではないこと、そしてオーナー側からの中途解約が難しい契約構造になっている点です。契約内容によっては、想定していた運用や出口戦略に制限が生じる可能性もあります。

そのため、マスターリース契約は「誰にでもおすすめできる管理方式」ではありません。安定性や手間削減を最優先する場合には選択肢になり得ますが、収益性や将来の柔軟性を重視するオーナーにとっては、管理委託という現実的な代替案も十分に検討する価値があります。

重要なのは、管理方式そのものの優劣ではなく、自身の投資目的やリスク許容度、物件の特性に合っているかどうかを冷静に判断することです。契約前には必ず複数の管理方式を比較し、数字や条件だけでなく、将来の運用まで見据えたうえで最終的な判断を行うようにしましょう。