賃貸経営において、空室損失は収益に直接影響する重要な課題です。空室が1ヶ月続けば、その期間の家賃収入は発生しません。しかし、実際の支出を伴わないため、どれほどの損失が出ているのかを正確に把握できていないオーナー様も少なくありません。
空室による損失額を数字で捉えられていないと、家賃を見直すべきか、設備投資を行うべきか、管理会社を変更すべきかといった判断が感覚的になりがちです。その結果、適切な対策が遅れ、空室損失が長期化してしまうケースも見られます。
本記事では、空室損失の基本的な考え方から計算方法、損失を抑えるための具体策までを、賃貸オーナー様向けに整理して解説します。数字を基準に判断できるよう、実務に即した視点でまとめています。
この記事でわかること
この記事では、賃貸経営における空室損失について、基礎から実践までを体系的に理解することができます。
まず、空室損失とは何か、経費とはどう違うのかを整理し、なぜこの数値を把握することが賃貸経営において重要なのかを解説します。見えにくい損失を、経営判断に必要な指標として捉え直すことができます。
次に、空室損失を算出するために必要な要素と計算方法を説明し、実際の数値を用いたシミュレーションを通じて、ご自身の物件に当てはめて考えられるようにします。
さらに、空室が発生する原因を「立地・家賃設定・物件設備・募集活動」の4つの観点から整理し、それぞれに対応した現実的な対策を紹介します。コストをかけずに見直せる点と、投資判断が必要な点を区別しながら解説します。
あわせて、空室損失と深く関係する管理会社の役割についても触れ、管理会社に求めるべき空室対策や、見直しを検討する際の判断基準を整理します。
空室損失とは
空室損失は賃貸経営において避けて通れない概念です。この言葉の正確な意味を理解することが、収益改善の第一歩となります。
空室損失とは、入居者がいないことによって失われる家賃収入のことを指します。物件を所有していても、入居者がいなければ収入は発生しません。その「得られなかった収入」を金額で表したものが空室損失です。
空室損失の定義
空室損失とは、賃貸物件において入居者が決まらない期間に発生する、本来得られるはずだった家賃収入の損失額を意味します。英語では「vacancy loss」と呼ばれ、不動産投資における重要な指標の一つです。この損失は、物件の稼働率と密接に関係しています。
たとえば、月額家賃8万円の部屋が3ヶ月間空室だった場合、空室損失は24万円となります。この金額は、入居者がいれば得られたはずの収入です。実際に支出が発生しているわけではありませんが、収益計画上は明確な損失として認識する必要があります。
不動産投資においては、表面利回りだけでなく、空室損失を考慮した実質利回りで収益性を判断することが重要です。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の住宅における空き家率は13.8%と公表されています。これは、全国的に見ても一定割合の住宅が空室状態にあることを示しており、空室リスクは決して一部の物件に限った問題ではありません。
こうした状況を踏まえると、空室損失を織り込んだ収益管理を行うことが、安定した賃貸経営には欠かせないと言えます。
この空室損失を正確に把握し、最小限に抑える努力をすることが、賃貸経営の成功につながります。特に複数の部屋を持つ一棟物件のオーナー様にとっては、空室損失の管理が経営全体の収益を大きく左右します。
出典: 総務省|令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果
空室損失と経費の違い
空室損失と経費は、しばしば混同されやすい概念です。しかし、この二つは会計上まったく異なる性質を持っています。この違いを理解することは、確定申告や収支計算において非常に重要です。
経費とは、実際に支出した金額のことを指します。修繕費、管理委託費、固定資産税、ローンの利息などが該当します。これらは確定申告において、不動産所得から差し引くことができる費用です。一方、空室損失は「得られなかった収入」であり、実際にお金が出ていくわけではありません。
空室損失は確定申告において経費として計上することができません。これは多くのオーナー様が誤解しているポイントです。空室損失は、あくまでも機会損失として収益計算に用いるものであり、税務上の経費にはならないのです。
収支計画を立てる際には、満室時の想定収入から空室損失を差し引いた金額を実質的な収入として計算します。そこからさらに経費を差し引いて、最終的な手取り収入を算出します。この区別を明確にすることで、より正確な収益シミュレーションが可能になります。
空室損失を把握する重要性
空室損失を正確に把握することは、賃貸経営の改善において欠かせないステップです。問題の大きさを数値で理解することで、適切な対策を講じることができるからです。
まず、空室損失を把握することで、経営状態の客観的な評価が可能になります。日本賃貸住宅管理協会の調査によると、全国平均の空室率は首都圏で約10%、地方では15%を超える地域もあります。ご自身の物件がこの平均と比べてどうなのかを知ることで、対策の緊急度を判断できます。
次に、空室損失の金額を明確にすることで、対策にかけられる予算の目安がわかります。年間100万円の空室損失が発生しているなら、その一部を使ってリフォームや設備投資を行う価値があるかどうかを検討できます。投資対効果を数値で比較することが可能になるのです。
さらに、管理会社の成果を評価する際の基準にもなります。管理会社に委託しているにもかかわらず空室損失が大きい場合、管理会社の空室対策が十分かどうかを客観的に判断できます。数字で話をすることで、管理会社との交渉も具体的になります。
空室損失を見える化することは、賃貸経営における問題解決の出発点です。まずは現状を正確に把握することから始めましょう。
空室損失の計算方法
空室損失を正確に計算することで、賃貸経営の現状を数値で把握できます。ここでは具体的な計算方法を解説します。
計算自体は難しいものではありません。必要な要素を押さえ、正しい計算式に当てはめることで、誰でも空室損失を算出できます。実際の計算例も交えながら、わかりやすく説明していきます。
計算に必要な3つの要素
空室損失を計算するためには、3つの要素が必要です。これらの情報を正確に把握することが、計算の精度を左右します。
1つ目は月額賃料です。空室となっている部屋の家賃がいくらかを確認します。複数の部屋がある場合は、それぞれの部屋の家賃を個別に把握する必要があります。家賃には共益費や管理費を含めた総額を使用するのが一般的です。
2つ目は空室期間です。入居者が退去してから次の入居者が入るまでの期間を月数で計算します。原状回復工事の期間も含めて考えることが多いです。業界では、原状回復から入居決定、鍵渡しまでの期間を「ダウンタイム」と呼ぶこともあります。
3つ目は対象物件の総戸数または総賃料です。一棟全体の空室損失を把握したい場合は、全戸の情報が必要になります。満室時の想定収入を基準にして、実際の収入との差額を計算する方法もあります。
これら3つの要素を正確に把握するためには、日々の管理記録をしっかりとつけることが大切です。管理会社に委託している場合は、月次報告書などで確認できるはずです。
空室損失の計算式
空室損失の基本的な計算式は非常にシンプルです。この計算式を使うことで、誰でも簡単に空室損失を算出できます。
空室損失 = 月額賃料 × 空室月数
これが最も基本的な計算式です。たとえば、月額賃料8万円の部屋が2ヶ月空室だった場合、8万円 × 2ヶ月 = 16万円が空室損失となります。年間の空室損失を計算したい場合は、その年に発生したすべての空室期間を合計します。
一棟全体の空室損失率を計算する場合は、以下の計算式を使用します。
空室損失率 = 空室損失額 ÷ 満室時想定年収 × 100
この空室損失率は、投資物件の収益性を評価する際の重要な指標となります。一般的に、空室損失率は5〜10%程度を見込んで収支計画を立てることが推奨されています。不動産投資における表面利回りと実質利回りの差は、主にこの空室損失率によって生じます。
また、より詳細な分析をしたい場合は、退去から募集開始までの期間、募集開始から成約までの期間、成約から入居までの期間を分けて記録すると、どの段階に問題があるのかが明確になります。
具体的な計算シミュレーション
実際の数字を使って、空室損失を計算してみましょう。ここでは12室のマンション一棟を例にシミュレーションを行います。
想定条件として、12室すべての月額賃料が7万円、年間で3室に退去があり、それぞれ平均2ヶ月の空室期間が発生したとします。この場合の空室損失を計算すると、7万円 × 2ヶ月 × 3室 = 42万円となります。年間の満室想定収入は7万円 × 12室 × 12ヶ月 = 1,008万円ですので、空室損失率は42万円 ÷ 1,008万円 × 100 = 約4.2%となります。
しかし、実際にはもっと長期間空室が続くケースもあります。同じ条件で、1室が6ヶ月間空室だった場合を考えてみましょう。この場合、7万円 × 6ヶ月 = 42万円の損失が1室だけで発生します。残り2室が2ヶ月ずつの空室だとすると、合計で42万円 + 28万円 = 70万円の空室損失となり、空室損失率は約6.9%に上昇します。
このシミュレーションからわかるように、長期空室が1室でもあると、空室損失は大幅に増加します。全国賃貸住宅新聞の調査によると、首都圏の平均空室期間は約2〜3ヶ月とされていますが、物件の条件によっては半年以上空室が続くこともあります。
ご自身の物件の数値を当てはめて計算することで、現状の問題の大きさを具体的に把握してください。
空室損失が発生する原因
空室損失を減らすためには、まず原因を正確に把握する必要があります。原因がわかれば、対策も明確になります。
空室が発生する原因は、大きく4つのカテゴリーに分類できます。立地・周辺環境、家賃設定、物件・設備、そして募集活動の問題です。それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
立地・周辺環境の問題
立地や周辺環境は、入居者が物件を選ぶ際の最重要要素の一つです。立地の問題は変えることができないため、その特性を理解したうえで対策を考える必要があります。
駅からの距離は、入居者の関心が非常に高いポイントです。SUUMOやHOME'Sなどの調査によると、単身者向け物件では「駅徒歩10分以内」を条件にする人が約7割に達するとされています。駅から遠い物件は、それだけで検索条件から外れてしまう可能性が高くなります。
周辺環境の変化も空室増加の原因となります。近くにあった大学や工場が移転した、大型商業施設が閉店した、といった変化は、入居需要に直接影響を与えます。また、治安の悪化や騒音問題なども、入居者を遠ざける要因になります。
立地そのものを変えることはできませんが、ターゲットを見直すことで対策が可能な場合もあります。たとえば、駅から遠い物件は車を持つファミリー層にターゲットを変更する、駐車場を確保するなどの方策が考えられます。
まずは、ご自身の物件の立地がどのような入居者層に適しているのかを客観的に分析することが大切です。
家賃設定の問題
家賃設定が相場と合っていないことは、空室が長期化する大きな原因の一つです。適正な家賃を設定することで、入居希望者からの問い合わせを増やすことができます。
家賃が高すぎる場合、入居希望者は同じエリアの競合物件を選んでしまいます。特にインターネットでの物件検索が主流となった現在、入居希望者は簡単に価格を比較できます。相場より高い物件は、検索結果の段階で候補から外されてしまうことが多いのです。
一方で、築年数の経過とともに適切な家賃の見直しが行われていないケースも見られます。新築時の家賃をそのまま維持していると、築年数が経過した分だけ割高感が生じます。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会のデータによると、築年数が1年経過するごとに、家賃は約1%ずつ下落する傾向があるとされています。
ただし、むやみに家賃を下げることが正解とは限りません。家賃を下げると入居者層が変わり、トラブルが増加するリスクもあります。また、一度下げた家賃を上げることは難しいため、慎重な判断が必要です。
周辺の競合物件の家賃を調査し、ご自身の物件の強みと弱みを考慮したうえで、適正な家賃設定を行うことが重要です。
物件・設備の問題
物件の状態や設備が入居者のニーズに合っていないことも、空室の原因となります。時代の変化に応じた設備の更新が求められています。
入居者が求める設備は年々変化しています。全国賃貸住宅新聞の「入居者に人気の設備ランキング」によると、単身者向け物件では「インターネット無料」「宅配ボックス」「オートロック」などが上位に挙がっています。これらの設備がない物件は、競合と比較して不利になります。
室内の状態も重要な要素です。壁紙の汚れや傷、水回りの古さ、床材の劣化などは、内見時に入居希望者の印象を大きく左右します。特に水回りは入居者の関心が高く、キッチンや浴室が古いと敬遠される傾向があります。
建物全体の外観や共用部分も見逃せません。エントランスやゴミ置き場が汚れていると、物件全体のイメージが下がります。管理が行き届いていないという印象を与え、入居を断念される原因になります。
設備投資には費用がかかりますが、空室損失と比較して判断することで、投資対効果を見極めることができます。どの設備を優先的に導入すべきかは、ターゲットとする入居者層によって異なります。
募集活動の問題
物件自体に大きな問題がなくても、募集活動が不十分であれば入居者は決まりません。効果的な募集活動が空室解消の鍵を握っています。
まず、掲載している物件情報の質が重要です。写真が暗い、枚数が少ない、情報が不足しているといった状態では、入居希望者の興味を引くことができません。不動産ポータルサイトの調査によると、写真が10枚以上ある物件は、5枚以下の物件と比べて問い合わせ数が約2倍になるというデータもあります。
掲載するポータルサイトの選択も影響します。SUUMOやHOME'S、athomeなど主要なサイトへの掲載はもちろん、地域によっては地元の不動産会社のサイトや、特定のターゲット向けのサイトへの掲載が効果的な場合もあります。
仲介会社へのアプローチも見直す価値があります。客付けを行う仲介会社に対して、広告料(AD)を適切に設定しているか、物件の情報を正しく伝えられているかを確認しましょう。仲介会社が積極的に紹介したくなるような条件を整えることで、成約率が向上します。
募集活動は管理会社に任せきりにせず、オーナー自身も状況を把握し、必要に応じて改善を求めることが大切です。
空室損失を減らす対策
原因を把握したら、次は具体的な対策を講じる段階です。効果的な対策を実施することで、空室損失を大幅に減らすことができます。
対策には費用がかかるものと、かからないものがあります。まずはコストをかけずにできることから始め、必要に応じて投資を検討していくのが現実的なアプローチです。
家賃・条件の見直し
家賃や入居条件の見直しは、最も即効性のある対策の一つです。適切な見直しを行うことで、問い合わせ数を増やすことができます。
まず、周辺の競合物件の家賃相場を調査しましょう。SUUMOやHOME'Sなどのポータルサイトで、同じエリア、同じ間取り、同じ築年数の物件がいくらで募集されているかを確認します。相場より明らかに高い場合は、家賃の引き下げを検討する必要があります。
家賃を下げることに抵抗がある場合は、期間限定のキャンペーンという形で対応することも可能です。フリーレント(一定期間の家賃無料)は、家賃自体を下げずに実質的な負担を軽減できる方法です。1〜2ヶ月のフリーレントを設定することで、入居者の初期費用の負担感を減らすことができます。
入居条件の見直しも効果的です。ペット可、楽器演奏可、外国人可など、条件を緩和することで、入居希望者の幅が広がります。ただし、条件を緩和する際は、トラブル防止のためのルールづくりも同時に行うことが重要です。
敷金・礼金の見直しも検討に値します。近年は「敷金・礼金ゼロ」の物件も増えており、初期費用の高さが入居のハードルになっている可能性があります。
物件の魅力向上
物件そのものの魅力を高めることで、競合物件との差別化を図ることができます。投資対効果を考慮しながら、優先順位をつけて実施していきましょう。
費用対効果が高いのは、インターネット無料化です。工事費と月額利用料はかかりますが、入居者の満足度向上と募集時のアピールポイント増加の両方に効果があります。全国賃貸住宅新聞の調査では、単身者向け物件で人気設備の第1位に挙げられることが多い設備です。
水回りのリフォームは費用がかかりますが、効果も大きい投資です。特にキッチンや浴室の印象は、入居決定に大きく影響します。フルリフォームが難しい場合は、蛇口の交換やシートの貼り替えなど、部分的な更新でも印象を改善できます。
照明器具の交換は、比較的低コストで実施できる改善策です。明るくおしゃれな照明に変えるだけで、内見時の印象が大きく変わります。LEDシーリングライトなら、省エネにもなり入居者にもメリットがあります。
共用部分の美化も忘れてはなりません。エントランスの清掃、植栽の手入れ、掲示物の整理など、管理が行き届いている印象を与えることで、物件全体の評価が上がります。
募集方法の改善
効果的な募集活動を行うことで、より多くの入居希望者に物件を知ってもらうことができます。情報の質と発信力を高めることがポイントです。
物件写真の質を向上させることは、最も重要な改善点の一つです。明るく清潔感のある写真は、入居希望者の興味を引きます。可能であれば、プロのカメラマンに撮影を依頼することも検討してください。写真撮影時は、天気の良い日中に撮影し、電気をすべて点けて明るさを確保することが基本です。
物件のアピールポイントを明確にした説明文を作成しましょう。駅からの距離、周辺施設、設備の特徴など、入居者にとってのメリットを具体的に記載します。他の物件との差別化ポイントがあれば、積極的にアピールしてください。
複数のポータルサイトへの掲載を確認することも大切です。管理会社がどのサイトに掲載しているか、写真や情報は適切かをチェックしましょう。掲載されていないサイトがあれば、追加掲載を依頼してください。
仲介会社への広告料(AD)の設定も見直しのポイントです。競合物件と比べて広告料が低いと、仲介会社が積極的に紹介してくれない可能性があります。繁忙期には広告料を上げるなど、柔軟な対応も検討しましょう。
管理会社の見直し
上記の対策を講じても空室が改善しない場合は、管理会社自体を見直す必要があるかもしれません。管理会社の姿勢や能力が、空室対策の成果を大きく左右するからです。
まず、現在の管理会社の対応を振り返ってみましょう。空室が発生した際に、どのような提案をしてくれたでしょうか。「時期が悪い」「家賃を下げましょう」という回答だけで終わっていませんか。積極的な空室対策を提案し、実行してくれる管理会社かどうかを評価することが大切です。
管理会社の空室対策力は、担当者の対応だけでなく、会社としての仕組みにも左右されます。ポータルサイトへの掲載体制、仲介会社とのネットワーク、内見対応の柔軟さなど、客付けに関する体制が整っているかを確認してください。
管理会社を変更することへの不安は理解できますが、空室損失が長期化するコストと比較して判断することが重要です。管理会社の変更手続き自体は、通常1〜2ヶ月程度で完了します。
複数の管理会社から提案を受け、比較検討することをおすすめします。管理料だけでなく、空室対策への取り組み姿勢や実績も重要な判断材料です。
空室損失と管理会社の関係
空室損失を減らすうえで、管理会社の果たす役割は非常に大きいです。信頼できる管理会社を選ぶことが、賃貸経営の成功につながります。
管理会社に何を求めるべきか、どのような基準で評価すべきかを理解することで、より良いパートナーシップを築くことができます。ここでは、管理会社との関係について詳しく解説します。
管理会社に求めるべき空室対策
管理会社には、単なる物件管理だけでなく、積極的な空室対策を求めることが重要です。具体的にどのような対策を期待できるのかを把握しておきましょう。
まず、迅速な原状回復と募集開始が基本です。退去後、できるだけ早く次の入居者を募集できる状態にすることで、空室期間を最小限に抑えることができます。原状回復の見積もりから工事完了までのスピード感は、管理会社の実力を測る一つの指標です。
適切な家賃設定のアドバイスも期待したいポイントです。周辺相場の調査に基づいて、適正な家賃を提案してくれる管理会社は信頼できます。単に「家賃を下げましょう」ではなく、なぜその金額なのかを根拠とともに説明してくれるかどうかを確認してください。
複数のポータルサイトへの掲載と、写真・情報の質の確保も重要です。管理会社によっては、特定のポータルサイトにしか掲載しないケースもあります。主要なサイトすべてに、質の高い情報を掲載してくれるかどうかを確認しましょう。
さらに、設備投資やリフォームの提案も価値ある対策です。空室が長期化している原因を分析し、費用対効果の高い改善策を提案してくれる管理会社は、オーナーの利益を考えてくれていると言えます。
管理会社変更の判断基準
管理会社を変更すべきかどうかは、多くのオーナーが悩むポイントです。判断基準を明確にすることで、適切な決断ができるようになります。
空室が業界平均より長期化している場合は、変更を検討する一つの目安です。先述のとおり、首都圏の平均空室期間は2〜3ヶ月程度とされています。これを大幅に超える空室が続いているなら、管理会社の対応に問題がある可能性があります。
管理会社からの報告や提案が不十分な場合も、危険信号です。空室が発生しているのに連絡がない、問い合わせ状況の報告がない、改善提案がないといった状況は、管理会社が積極的に動いていない証拠かもしれません。
コミュニケーションの質も判断材料になります。こちらからの質問や要望に対して、迅速かつ丁寧に対応してくれるかどうか。担当者が頻繁に変わり、引き継ぎができていないといった状況も問題です。
管理費用だけで判断するのは避けましょう。安い管理費を売りにしていても、空室対策がおろそかであれば、空室損失のほうがはるかに大きくなります。管理費と空室損失のトータルで考えることが重要です。
定額制管理のメリット
管理会社を選ぶ際に注目したいのが、料金体系です。定額制の管理サービスには、従来の管理方式にはないメリットがあります。
一般的な管理会社は、家賃の5%程度を管理委託費として徴収します。一方、定額制の管理サービスでは、月額固定の料金で管理業務を行います。入居者数や家賃に関係なく一定の費用となるため、コストの見通しが立てやすくなります。
定額制のメリットは、満室になるほどオーナーの手取り収入が増えることです。従来の歩合制では、家賃収入が増えると管理費も比例して増加しますが、定額制ならその心配がありません。空室対策に成功した際のリターンがより大きくなるのです。
また、定額制を採用している管理会社は、効率的な管理体制を構築していることが多いです。24時間対応のコールセンターや、オンラインでの報告システムなど、テクノロジーを活用したサービスを提供しているケースもあります。
管理会社を選ぶ際は、料金体系だけでなく、サービス内容や対応力も含めて総合的に判断してください。定額制であっても、空室対策に消極的な管理会社では意味がありません。料金体系と実際のサービス品質の両方を確認することが大切です。
まとめ
空室損失は、賃貸経営において完全に避けることはできませんが、考え方と対策次第でコントロールできる損失です。重要なのは、「空いている」という状態を感覚ではなく、数字として把握することです。
まずは、月額賃料と空室期間をもとに、ご自身の物件でどの程度の空室損失が発生しているのかを確認しましょう。損失額が見えるようになることで、家賃調整や設備投資、募集方法の見直しといった判断を冷静に行えるようになります。
次に、空室が発生している原因を、立地や家賃設定、物件の状態、募集の進め方といった複数の視点から整理することが重要です。原因を切り分けることで、やみくもにコストをかけるのではなく、優先すべき対策が明確になります。
また、空室損失を抑えるうえでは、管理会社の役割も大きなポイントです。空室状況を可視化し、具体的な改善提案を行ってくれる管理会社かどうかを一度見直してみる価値があります。管理費の安さだけでなく、空室対策への姿勢や対応力も含めて判断することが、長期的な収益改善につながります。
空室損失を把握し、原因を整理し、必要な対策を選ぶ。この一連の流れを繰り返すことが、安定した賃貸経営への近道です。まずは現状を確認することから、できるところから取り組んでいきましょう。