賃貸物件を自主管理している大家さんにとって、空室を埋めるための「客付け」は収益を左右する最重要ポイントです。ただ、いざ自分で募集しようとすると「どこに載せる?」「仲介会社へどう頼む?」「契約は何に注意?」と手が止まりがち。
この記事では、自主管理大家ができる客付けの方法(貼り紙・SNS・大家向けサイト・仲介会社)を手順付きで整理し、早く決めるためのコツ と つまずいた時の改善策 までまとめます。
「自分でやる部分」と「プロに任せる部分」を切り分けて、空室期間を短縮しましょう。
この記事でわかること
この記事を読むことで、自主管理大家として客付けを成功させるために必要な知識とノウハウを体系的に理解できます。
まず、自主管理における客付けの基本概念と、管理委託との違いを明確に把握できます。次に、貼り紙やSNS、不動産情報サイト、仲介会社への依頼という4つの客付け方法について、それぞれの特徴と具体的な手順を学べます。自主管理で客付けするメリットとデメリットを理解したうえで、仲介会社を効果的に活用するコツや、入居契約時の注意点についても詳しく解説します。
さらに、客付けがうまくいかないときの対策や、自主管理と管理委託を併用するという選択肢についても触れています。この記事を読み終えたあとには、自分の物件に最適な客付け戦略を立てられるようになるでしょう。
自主管理における客付けとは
自主管理における客付けとは、管理会社にすべてを任せるのではなく、オーナー自身が主体となって入居者募集を行い、空室を埋めていくことを指します。本章では、客付けの基本的な考え方から、管理委託との違い、客付けが必要になるタイミングまでを解説します。
賃貸経営では、空室が発生するとその分の家賃収入が得られません。自主管理を選ぶオーナーにとって、「どのように入居者を見つけるか」は、収益を安定させるうえで欠かせない重要なポイントになります。
自主管理における客付けの基本
客付けとは、賃貸物件に入居者を募集し、契約に至るまでの一連の活動を指します。具体的には、物件の宣伝・広告活動、内見対応、入居審査、契約手続きなどが含まれます。自主管理大家の場合、これらの活動を自分自身で行うか、仲介会社に依頼して入居者を紹介してもらうかの選択肢があります。
自主管理は一部のオーナーに限られた方法ではなく、物件規模やライフスタイルに応じて「できる範囲だけ自分で行う」という選択をするケースも見られます。自主管理で客付けを成功させるには、物件の魅力を正しく整理し、想定する入居者層に合った募集手段を選ぶことが重要です。あわせて、周辺の賃貸市場や競合物件の条件を確認し、差別化できるポイントを明確にしておきましょう。
客付けは一度覚えてしまえば、同じ手順を繰り返すことで効率化できます。最初は手間がかかるかもしれませんが、経験を積むことでスムーズに対応できるようになります。
管理委託との違い
管理委託とは、賃貸物件の管理業務を専門の管理会社に一括して任せる方式です。管理委託の場合、客付けも管理会社が担当するため、オーナーは基本的に入居者募集に関与しません。一方、自主管理では客付けを含むすべての管理業務をオーナー自身が行うか、必要に応じて個別に外部に依頼します。
管理委託の場合、一般的に家賃の5%前後の管理委託費が発生します。仮に家賃8万円の物件が6戸あるアパートを管理委託した場合、月額2万4,000円、年間で約29万円のコストがかかる計算です。自主管理ではこの費用を削減できる反面、オーナー自身が時間と労力を投入する必要があります。
管理委託では管理会社のネットワークを活用できる一方、自主管理では物件の魅力をオーナー自身の言葉で直接伝えられるという利点があります。どちらが優れているかは一概に言えず、オーナーの状況や物件の特性によって最適な選択は異なります。
自主管理で客付けが必要になるタイミング
自主管理で客付けが必要になる最も一般的なタイミングは、現入居者の退去が確定したときです。退去予告を受けた段階から、次の入居者を探すための活動を開始することが望ましいでしょう。退去から次の入居までの空室期間をいかに短くするかが、収益を左右する重要なポイントとなります。
空室期間の長さは、エリアや物件条件、募集時期によって大きく異なりますが、募集開始から成約までに一定の期間を要することは珍しくありません。退去予告を受けた段階から募集準備を進め、広告素材や内見体制を整えておくことで、退去と次の入居のタイミングを近づけやすくなります。空室期間をいかに短縮できるかが、自主管理大家にとって重要なポイントです。
また、新規に物件を購入した際も客付けが必要になります。特に空室の状態で購入した物件や、オーナーチェンジ後に退去が発生した場合は、早急に客付け活動を行う必要があります。季節的には、1〜3月の引っ越しシーズンに向けて前年の秋頃から準備を始めるのが効果的です。
自主管理で客付けする4つの方法
自主管理大家が入居者を募集する方法は大きく4つあります。それぞれの方法には特徴があり、物件の立地や条件、オーナーの状況によって適した方法は異なります。
ここでは、最もシンプルな貼り紙から、SNSやブログの活用、不動産情報サイトへの掲載、そして仲介会社への依頼まで、具体的な手順とポイントを解説します。複数の方法を組み合わせることで、より効果的な客付けが可能になります。
物件に「入居者募集」の貼り紙を設置する
最もシンプルでコストのかからない方法が、物件に「入居者募集」の貼り紙を設置することです。これは意外にも効果的な方法で、特に地域密着型の物件や、駅前など人通りの多い場所に立地する物件では一定の効果が期待できます。近隣に住んでいる人や、その地域で物件を探している人の目に留まりやすいためです。
貼り紙を作成する際は、物件の基本情報(間取り、家賃、敷金・礼金、入居可能日など)を明記し、連絡先として電話番号やメールアドレスを記載します。見やすいデザインにすることが重要で、文字が小さすぎたり、情報が詰め込みすぎたりすると読まれにくくなります。防水対策を施した看板タイプにすると、長期間の掲出にも耐えられます。
ただし、貼り紙だけでは広いエリアからの入居希望者にアプローチすることは難しいです。あくまで他の方法と併用する補助的な手段として位置づけるのが現実的でしょう。また、物件によっては美観上の理由から貼り紙が適さない場合もあります。
SNSやブログで宣伝する
SNSやブログを活用した入居者募集は、コストをかけずに広く情報を発信できる方法です。Twitter(X)、Instagram、Facebookなどのソーシャルメディアや、アメブロ、noteなどのブログサービスを利用して、物件情報を発信します。特に写真映えする物件や、独自の魅力がある物件には効果的な手段です。
SNSでの物件紹介では、室内の写真を多数掲載することがポイントです。明るく清潔感のある写真を心がけ、部屋の広さが伝わるアングルで撮影しましょう。周辺環境の魅力(駅までの距離、近隣の商業施設、公園など)も合わせて紹介すると、入居後の生活がイメージしやすくなります。ハッシュタグを効果的に使用することで、物件を探している人に情報が届きやすくなります。
ただし、SNSでの客付けは即効性に欠ける面があります。フォロワーがいない状態から始めると、情報が拡散するまでに時間がかかります。また、個人情報の取り扱いには十分注意が必要です。問い合わせがあった場合の対応方法も事前に決めておきましょう。
大家向け不動産情報サイトに掲載する
大家さんが直接物件情報を掲載できる不動産情報サイトを活用する方法もあります。「ジモティー」「ウチコミ!」などのサービスでは、オーナーが直接物件情報を掲載し、入居希望者と連絡を取ることができます。仲介会社を介さないため、仲介手数料を節約できる点が大きなメリットです。
これらのサイトに掲載する際は、物件の魅力が伝わる写真と詳細な情報を用意しましょう。間取り図、家賃、初期費用、設備情報、周辺環境などを漏れなく記載します。入居者目線で「知りたい情報」を網羅することがポイントです。また、他の掲載物件をチェックして、自分の物件がどのように見えるか客観的に確認することも大切です。
注意点として、これらのサイトを利用する場合は、入居審査や契約手続きをすべてオーナー自身で行う必要があります。保証会社の利用手続きや契約書の作成など、専門的な知識が必要な場面もあるため、事前に準備しておくことが重要です。
仲介会社に客付けを依頼する
自主管理であっても、客付けだけを仲介会社に依頼することは可能です。これは最も効率的かつ確実性の高い方法といえるでしょう。仲介会社は多くの入居希望者を抱えており、SUUMOやHOMESなどの大手不動産ポータルサイトに物件を掲載する手段も持っています。
仲介会社に依頼する場合、成約時に仲介手数料として家賃の1ヶ月分程度を支払うのが一般的です。さらに、広告料(AD)を設定することで、仲介会社に積極的に紹介してもらいやすくなります。ADの相場は家賃の0.5〜2ヶ月分程度で、繁忙期や競争の激しいエリアでは高めに設定する傾向があります。
仲介会社に依頼する際は、物件資料(マイソク)を用意します。マイソクとは、物件の概要や間取り、写真、家賃条件などをまとめた資料です。この資料の出来栄えが仲介会社の営業マンの印象を左右し、入居者への紹介優先度にも影響します。複数の仲介会社に依頼することで、より多くの入居希望者にアプローチできます。
自主管理で客付けするメリット
自主管理で客付けを行うことには、いくつかの明確なメリットがあります。コスト削減だけでなく、入居者選定の自由度や物件の魅力を直接伝えられる点も大きな利点です。
ここでは、自主管理による客付けの3つの主要なメリットについて詳しく解説します。これらのメリットを最大限に活かすことで、賃貸経営の収益性と満足度を高めることができます。
管理委託費・仲介手数料を削減できる
自主管理で客付けを行う最大のメリットは、コスト削減です。管理会社に全面委託している場合、家賃の3〜5%程度の管理委託費が毎月発生します。さらに、客付け時には仲介手数料や広告料が上乗せされることもあります。自主管理ではこれらの費用を大幅に抑えることが可能です。
具体的な数字で見てみましょう。家賃8万円の物件を6戸所有している場合、管理委託費が5%だと月額2万4,000円、年間で約29万円になります。10年間では290万円もの出費です。自主管理に切り替えることで、この費用をまるごと手元に残すことができます。また、大家向け不動産情報サイトを利用して直接契約に至れば、仲介手数料も不要になります。
もちろん、自主管理には自分の時間と労力を投入する必要があります。しかし、本業の傍らで賃貸経営を行っている方の場合、週末や空き時間を活用して対応できるケースも多いです。削減できたコストを物件の設備投資や修繕に回すことで、物件の競争力を高めることもできます。
入居者を自分で選定できる
自主管理で客付けを行うことで、入居者の選定を自分の基準で行えるというメリットがあります。管理会社に任せている場合、入居審査の基準や判断がオーナーの意向と異なることがあります。自主管理であれば、どのような入居者を受け入れるか、最終的な判断を自分で下すことができます。
入居者の質は、賃貸経営の安定性に大きく影響します。家賃滞納や近隣トラブルを起こしやすい入居者を避けることで、長期的に安定した経営が可能になります。内見時に直接入居希望者と会話することで、人柄や生活スタイルを確認し、物件にふさわしい入居者かどうかを判断できます。
ただし、入居審査には適切な基準が必要です。個人的な好き嫌いだけで判断するのではなく、収入証明や在籍確認、保証会社の審査結果など、客観的な指標も重視しましょう。また、差別的な理由での入居拒否は法律に抵触する可能性があるため注意が必要です。
物件の魅力を直接アピールできる
自主管理の客付けでは、物件の魅力をオーナー自身の言葉で直接アピールできます。管理会社や仲介会社の担当者は多くの物件を扱っているため、一つひとつの物件の細かい魅力まで把握していないことがあります。オーナーだからこそ知っている物件の良さを、入居希望者に直接伝えることができるのは大きな強みです。
たとえば、日当たりの良い時間帯、周辺の隠れた名店、静かで過ごしやすい環境など、住んでみないとわからない魅力はたくさんあります。内見時にこれらの情報を直接伝えることで、入居希望者の不安を解消し、入居の決め手を提供できます。オーナーの人柄が伝わることで、入居者との信頼関係構築にもつながります。
また、入居希望者の要望を直接聞けるため、柔軟な対応も可能になります。「この設備があれば契約したい」「入居日を少しずらしてほしい」といった要望に対して、その場で検討・回答できるのは自主管理ならではのメリットです。
自主管理で客付けするデメリット
自主管理での客付けにはメリットがある一方で、デメリットも存在します。時間と手間がかかること、専門知識が必要なこと、空室期間が長期化するリスクなど、事前に理解しておくべき点があります。
ここでは、自主管理による客付けの3つの主要なデメリットについて解説します。これらのデメリットを認識したうえで、自分に合った方法を選択することが重要です。
入居者募集に時間と手間がかかる
自主管理で客付けを行う最大のデメリットは、入居者募集に多くの時間と手間がかかることです。物件写真の撮影、募集広告の作成、不動産情報サイトへの掲載、問い合わせ対応、内見のスケジュール調整、内見当日の対応など、一連の作業をすべて自分で行う必要があります。
本業がある方にとって、これらの業務を平日に行うのは困難です。内見希望は週末に集中することが多いですが、複数の内見希望者がいる場合はスケジュール調整だけでも一苦労です。遠方に物件がある場合は、内見のたびに移動する必要があり、交通費と時間の負担も無視できません。
また、問い合わせがあってもすぐに対応できないと、入居希望者が他の物件に流れてしまうリスクがあります。客付けの繁忙期には、迅速な対応ができるかどうかが成約率を左右します。自分のライフスタイルと照らし合わせて、本当に自主管理で対応できるか検討する必要があります。
契約実務の専門知識が必要になる
自主管理で入居契約まで行う場合、賃貸借契約に関する専門知識が必要になります。契約書の作成、重要事項の説明、必要書類の取り揃えなど、法律に基づいた適切な手続きを踏まなければなりません。知識不足のまま契約を行うと、後々トラブルに発展するリスクがあります。
借地借家法や消費者契約法など、賃貸借契約に関連する法律は複数あります。たとえば、退去時の原状回復費用の負担については、国土交通省のガイドラインに沿った取り決めが必要です。このガイドラインを理解せずに契約すると、退去時にトラブルになる可能性があります。
宅地建物取引業者(仲介会社)に重要事項説明を依頼せずに直接契約する場合、説明義務は法律上は生じませんが、入居者との認識齟齬を防ぐためにも、重要な事項は書面で確認しておくべきです。不安がある場合は、契約書の作成だけを専門家に依頼するという選択肢もあります。
空室期間が長期化するリスクがある
自主管理での客付けは、管理会社に依頼する場合と比べて入居者へのリーチが限られるため、空室期間が長期化するリスクがあります。特に、大手不動産ポータルサイトへの掲載ができない場合、多くの入居希望者に物件情報が届かず、成約までに時間がかかることがあります。
空室期間が長引くと、その分だけ家賃収入が得られません。家賃8万円の物件が3ヶ月空室になれば、24万円の機会損失です。この損失は、管理委託費や仲介手数料を大きく上回ることもあります。コスト削減を目的に自主管理を選んだとしても、空室期間が長引いては本末転倒です。
空室リスクを軽減するためには、客付けの方法を複数組み合わせることが重要です。自分でできる範囲で募集活動を行いながら、同時に仲介会社にも依頼するというハイブリッドな方法が現実的でしょう。仲介会社の持つネットワークと、自主管理のコストメリットを両立させることができます。
仲介会社を活用した客付けのコツ
自主管理であっても、仲介会社を上手に活用することで効率的な客付けが可能になります。仲介会社は多くの入居希望者を抱えており、大手不動産ポータルサイトへの掲載手段も持っています。
ここでは、仲介会社を活用して客付けを成功させるための具体的なコツを解説します。仲介会社の選び方からマイソクの作成、広告料の設定、信頼関係の築き方まで、実践的なノウハウをお伝えします。
ターゲット層に強い仲介会社の選び方
仲介会社を選ぶ際は、自分の物件のターゲット層に強い会社を選ぶことが重要です。すべての仲介会社が同じ強みを持っているわけではありません。学生向けに強い会社、ファミリー層に強い会社、単身者向けに強い会社など、得意とする顧客層は会社によって異なります。
物件の特性に合った仲介会社を見つけるには、まず周辺にどのような仲介会社があるかをリサーチしましょう。物件の最寄り駅周辺に店舗を構えている仲介会社は、そのエリアの入居希望者を多く抱えている可能性が高いです。大手チェーンの仲介会社は集客力がある一方、地元密着型の会社はエリアに詳しく、きめ細かな対応が期待できます。
複数の仲介会社に依頼することで、より多くの入居希望者にアプローチできます。ただし、やみくもに多くの会社に依頼するよりも、厳選した3〜5社程度に絞って深い関係を築く方が効果的な場合もあります。実際に店舗を訪問して、担当者の対応を確認してから依頼を決めるのも良い方法です。
マイソクのブラッシュアップ
マイソクとは、物件の概要情報をまとめた資料のことです。仲介会社の営業マンは、このマイソクを見て物件の印象を判断し、入居希望者への紹介優先度を決めます。魅力的なマイソクを用意することで、仲介会社に積極的に紹介してもらいやすくなります。
効果的なマイソクには、明るく清潔感のある室内写真が欠かせません。自然光が入る時間帯に撮影し、部屋が広く見えるアングルを工夫しましょう。間取り図は正確に作成し、家賃・敷金・礼金・管理費などの費用条件、設備情報、周辺環境の魅力などを漏れなく記載します。物件のセールスポイントは目立つように強調しましょう。
マイソクの完成度が低いと、仲介会社の営業マンが「紹介しにくい物件」と判断してしまう可能性があります。他の物件と比較して見劣りしないか、入居希望者に魅力が伝わる内容になっているか、客観的な視点でチェックすることが大切です。必要であれば、プロのカメラマンに写真撮影を依頼するのも一つの手です。
広告料(AD)の設定と費用対効果
広告料(AD)とは、仲介会社に支払う成約時の報酬で、仲介手数料とは別に設定するものです。ADを設定することで、仲介会社は物件を優先的に紹介するインセンティブが高まります。競争の激しいエリアや、空室期間を短縮したい場合には、ADの設定を検討しましょう。
ADの相場は、家賃の0.5〜2ヶ月分程度です。繁忙期(1〜3月)は入居希望者が多いためADを低めに設定しても成約しやすい一方、閑散期(6〜8月頃)はADを高めに設定しないと仲介会社に紹介してもらいにくくなる傾向があります。周辺の競合物件がどの程度のADを設定しているかも参考にしましょう。
ADを設定する際は、費用対効果を考慮することが重要です。家賃8万円の物件でADを2ヶ月分(16万円)設定した場合、空室期間が2ヶ月短縮できれば元が取れる計算です。一方、ADを高く設定しすぎると利益を圧迫します。物件の状況と市場の動向を見ながら、適切なAD設定を心がけましょう。
仲介会社との信頼関係の築き方
仲介会社との良好な関係を築くことは、継続的な客付け成功の鍵です。仲介会社の担当者は多くの物件を扱っているため、オーナーとの関係が良い物件を優先的に紹介する傾向があります。信頼関係を築くことで、空室が発生した際に真っ先に声をかけてもらえるようになります。
信頼関係を築くためには、まず連絡や対応を迅速に行うことが基本です。内見希望があった際の日程調整、条件交渉への回答、必要書類の準備など、仲介会社からの連絡には素早く対応しましょう。対応が遅いと、仲介会社は「このオーナーの物件は紹介しにくい」と感じてしまいます。
また、成約後のお礼の連絡や、定期的な情報交換も関係構築に効果的です。成約のたびにお礼を伝え、空室が発生した際は早めに情報を共有します。仲介会社の担当者の名前を覚え、個別の関係を築くことで、単なる取引先以上のパートナーシップが生まれます。
自主管理の客付けで入居契約する際の注意点
入居希望者が見つかったら、次は契約手続きです。自主管理で入居契約まで行う場合、適切な契約書の作成や入居前の確認、退去時のルール決めなど、注意すべき点がいくつかあります。
ここでは、入居契約時に押さえておくべき3つの重要なポイントを解説します。これらを適切に行うことで、入居後のトラブルを未然に防ぎ、円滑な賃貸経営を実現できます。
賃貸借契約書の作成
賃貸借契約書は、オーナーと入居者の権利義務関係を定める最も重要な書類です。自主管理で契約を行う場合、契約書の内容に不備があると後々トラブルの原因になります。必要な項目を漏れなく記載し、双方の合意のもとで締結することが重要です。
契約書に記載すべき主な項目は、物件の表示(所在地、構造、面積など)、契約期間、家賃・敷金・礼金の額と支払い方法、禁止事項、解約条件、原状回復義務などです。普通借家契約か定期借家契約かによっても記載内容が異なります。定期借家契約の場合は、更新がないことを事前に書面で説明する必要があります。
契約書のひな形は、不動産関連団体や書籍で入手できますが、物件の状況に合わせたカスタマイズが必要な場合もあります。不安がある場合は、行政書士や司法書士、弁護士などの専門家に契約書のチェックを依頼するのも有効な方法です。費用はかかりますが、トラブル防止への投資と考えましょう。
入居前の室内確認
入居契約時には、入居者と一緒に室内の状態を確認する「入居前確認」を行うことが重要です。この確認を怠ると、退去時に既存の傷や汚れが入居者の責任とされ、トラブルに発展する可能性があります。入居前の状態を双方で確認し、記録を残しておくことで、退去時の原状回復をめぐる争いを防げます。
入居前確認では、壁や床の傷、設備の動作状況、汚れの有無などを細かくチェックします。確認した内容は「入居時チェックリスト」として書面に残し、写真も撮影しておきましょう。オーナーと入居者の双方が署名捺印することで、入居時の状態を証拠として残すことができます。
この入居前確認は、単にトラブル防止のためだけでなく、入居者との信頼関係構築にも役立ちます。オーナーが丁寧に対応する姿勢を見せることで、入居者も物件を大切に使おうという意識が生まれます。入居後の生活ルールや緊急連絡先の説明も、このタイミングで行うとよいでしょう。
退去時の原状回復費用負担の取り決め
退去時の原状回復費用の負担は、賃貸経営において最もトラブルになりやすい項目の一つです。国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいた取り決めを行い、契約書に明記しておくことが重要です。
ガイドラインによれば、経年劣化や通常の使用による損耗は原則としてオーナー負担、入居者の故意・過失による損傷は入居者負担とされています。たとえば、日焼けによるクロスの変色は経年劣化としてオーナー負担ですが、タバコのヤニによる汚れや画鋲の穴が多数ある場合は入居者負担となる可能性があります。
契約時に原状回復の範囲と負担割合を明確に説明し、入居者の理解を得ておくことがトラブル防止につながります。敷金の精算方法についても事前に説明しておきましょう。退去時のトラブルは長引くと時間も精神的エネルギーも消耗するため、入居時の取り決めをしっかり行うことが大切です。
客付けがうまくいかないときの対策
募集活動を続けても入居者が決まらない場合、何らかの対策が必要です。漫然と同じ方法を続けるのではなく、原因を分析して適切な改善策を講じることが重要です。
ここでは、客付けがうまくいかないときに検討すべき4つの対策を解説します。ターゲットの見直しから設備の導入、条件の調整まで、状況に応じた対策を講じることで、空室問題を解決に導きましょう。
入居ターゲットの見直し
入居者が決まらない場合、まず検討すべきはターゲット層の見直しです。想定しているターゲットと物件の特性がマッチしていない可能性があります。物件の立地、間取り、設備、家賃などから、本当に適切なターゲット層を狙えているかを再検討しましょう。
たとえば、駅から徒歩15分の1Kマンションで若い単身者をターゲットにしていた場合、駅近を重視する層にはなかなか響きません。この場合、車を持っている社会人や、静かな環境を好む入居者をターゲットに切り替える方が効果的かもしれません。ペット可にして動物を飼いたい層を狙う、高齢者向けに切り替えるなど、ターゲット変更の選択肢は複数あります。
ターゲットを変更する際は、その層が重視するポイントに合わせて募集条件や広告内容も見直す必要があります。ターゲット層がよく利用する募集媒体を選ぶことも重要です。市場調査を行い、同エリアの競合物件がどのような層をターゲットにしているかも参考にしましょう。
人気設備の導入
入居者に選ばれる物件にするために、人気設備の導入を検討しましょう。全国賃貸住宅新聞が毎年発表している「入居者に人気の設備ランキング」によると、単身者向けではインターネット無料、宅配ボックス、浴室乾燥機などが上位にランクインしています。
特にインターネット無料は、在宅ワークの増加に伴い需要が高まっている設備です。導入にはコストがかかりますが、月々の負担は数千円程度に抑えられることが多く、家賃に上乗せしても選ばれる物件になる可能性があります。エアコン、独立洗面台、モニター付きインターホンなども、入居決定の後押しになる設備です。
設備導入を検討する際は、費用対効果を慎重に判断しましょう。初期費用が高額な設備でも、空室期間の短縮や家賃アップにつながれば十分にペイできます。逆に、ターゲット層が重視しない設備に投資しても効果は限定的です。周辺の競合物件の設備状況もリサーチして、差別化につながる設備を優先的に導入することをおすすめします。
フリーレント・初期費用減額の検討
入居時の負担を軽減するフリーレントや初期費用の減額も、客付けを促進する有効な手段です。フリーレントとは、入居後の一定期間(通常1〜2ヶ月)の家賃を無料にするサービスです。初期費用の減額としては、敷金・礼金をゼロにする、あるいは減額するという方法があります。
初期費用は入居者にとって大きな負担であり、特に若年層や引っ越し費用を抑えたい層には訴求力があります。「敷金礼金ゼロ」は検索条件としてもよく使われるため、検索結果で上位に表示されやすくなる効果も期待できます。フリーレントは、家賃を下げずに実質的な値下げ効果を生み出せるメリットがあります。
ただし、フリーレントや初期費用減額は収益に直接影響します。フリーレント1ヶ月分は、家賃1ヶ月分の損失と同義です。長期入居が見込める場合や、空室期間が長引いている場合には有効ですが、短期退去されると損失が大きくなります。フリーレント物件には短期違約金条項(一定期間内に退去した場合にフリーレント分を返還する)を設けるなどの対策も検討しましょう。
家賃設定の再検討
客付けがうまくいかない根本的な原因として、家賃設定が市場相場より高い可能性があります。周辺の類似物件の家賃を調査し、自分の物件が競争力のある価格設定になっているか確認しましょう。相場より高い家賃では、いくら募集活動を頑張っても入居者は決まりません。
家賃相場の調査は、SUUMO、HOMES、アットホームなどの不動産ポータルサイトで簡単に行えます。同じエリア、同じ間取り、同じ築年数の物件がいくらで募集されているかをチェックしましょう。物件の設備や条件に差がある場合は、その分を考慮して比較します。仲介会社に相場感を聞くのも有効な方法です。
家賃を下げることには抵抗があるかもしれませんが、空室が続くことによる機会損失の方が大きくなることもあります。家賃8万円の物件が3ヶ月空室で24万円の損失に対し、家賃を5,000円下げても入居が決まれば、4年住んでもらえば元が取れます。長期的な視点で判断することが重要です。
自主管理と管理委託の併用という選択肢
自主管理と管理委託は、二者択一ではありません。客付けだけを仲介会社に依頼する、契約書作成だけを専門家に任せるなど、必要な部分だけを外部に依頼する「いいとこ取り」も可能です。
ここでは、自主管理と管理委託を併用するという選択肢について解説します。自分の得意な部分は自分で行い、苦手な部分や専門性が必要な部分はプロに任せることで、コストと手間のバランスを取ることができます。
客付けのみ仲介会社に依頼する
日常の管理業務は自分で行いながら、客付けだけを仲介会社に依頼するという方法があります。これにより、管理委託費を支払わずに、仲介会社のネットワークを活用した効率的な入居者募集が可能になります。成約時に仲介手数料とADを支払う必要がありますが、毎月の固定費は発生しません。
この方法は、日常の管理業務(家賃回収、クレーム対応、修繕手配など)を自分で問題なく行えるオーナーに適しています。入居者が決まってしまえば、しばらくは客付け業務は発生しないため、その間は自主管理のコストメリットを享受できます。退去が発生したときだけ仲介会社に依頼すればよいのです。
仲介会社に客付けを依頼する際は、複数の会社に声をかけることをおすすめします。一般媒介で複数の仲介会社に依頼することで、より多くの入居希望者にリーチできます。それぞれの仲介会社との関係を良好に保ち、空室発生時にすぐに動いてもらえる体制を作っておきましょう。
契約書作成のみ専門家に依頼する
入居者募集や内見対応は自分で行い、契約書の作成だけを専門家に依頼するという方法もあります。賃貸借契約書の作成には法的知識が必要であり、不備があるとトラブルの原因になります。この部分だけを行政書士や司法書士、弁護士などの専門家に任せることで、リスクを軽減しながらコストも抑えられます。
契約書作成の依頼費用は、行政書士の場合で1〜3万円程度が相場です。管理委託の年間コストと比較すれば、はるかに安価に専門家のチェックを受けることができます。一度作成した契約書は、次回以降の契約でもベースとして使用できるため、2回目以降はさらにコストを抑えられる可能性があります。
契約書作成を依頼する際は、物件の特性や希望する契約条件を詳しく伝えましょう。定期借家契約にするか普通借家契約にするか、特約として入れたい条項はあるかなど、事前に整理しておくとスムーズです。専門家との打ち合わせの機会に、賃貸経営に関する法的な疑問点を質問するのも良いでしょう。
日常管理を外部委託するメリット
自主管理の負担が大きいと感じる場合、日常の管理業務を外部に委託するという選択肢もあります。最近では、従来の管理会社のフルサービスではなく、必要な業務だけを低コストで代行するサービスも登場しています。月額数千円から利用できるサービスもあり、自主管理の負担を軽減しながらコストも抑えられます。
日常管理を外部委託することで、本業に集中できる、緊急時の対応を任せられる、専門的なトラブルへの対処が安心といったメリットがあります。特に、本業が忙しい方や、遠方に物件を所有している方にとっては、時間と精神的な負担の軽減は大きな価値があります。
外部委託を検討する際は、どの業務を任せたいのかを明確にしましょう。家賃回収と督促だけを任せたいのか、クレーム対応も含めて任せたいのか、修繕手配まで任せたいのかによって、選ぶサービスや費用が変わってきます。複数のサービスを比較検討し、自分のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。
まとめ
自主管理大家の客付けについて、基本的な考え方から具体的な方法、メリット・デメリット、そして成功のコツまでを解説してきました。自主管理で客付けを行うことで、管理委託費や仲介手数料を削減し、入居者選定の自由度を高めることができます。一方で、時間と手間がかかること、専門知識が必要なこと、空室期間が長期化するリスクがあることも忘れてはなりません。
効果的な客付けのためには、複数の方法を組み合わせることが重要です。自分でできる範囲で募集活動を行いながら、仲介会社も上手に活用しましょう。仲介会社との良好な関係を築き、魅力的なマイソクを用意し、適切なADを設定することで、空室期間を短縮できます。客付けがうまくいかない場合は、ターゲットの見直し、設備の導入、条件の調整などの対策を検討してください。
自主管理と管理委託は二者択一ではありません。客付けだけを仲介会社に依頼する、契約書作成だけを専門家に任せるなど、必要な部分だけを外部に依頼する方法もあります。自分の状況や物件の特性に合わせて、最適な方法を選択することが、安定した賃貸経営への第一歩です。この記事で紹介した方法を参考に、あなたの物件に合った客付け戦略を実践してください。