お役立ちコラム

不動産相続トラブルが起きる理由とは?よくある原因と具体的な対策

不動産相続トラブルが起きる理由とは?よくある原因と具体的な対策のアイキャッチ

親から受け継ぐ大切な不動産。ところが相続をきっかけに、家族関係がぎくしゃくしてしまうケースは少なくありません。現金と違って不動産は簡単に分けられず、売却や活用にも手間がかかるため、話し合いがこじれやすい資産です。

実務の相談でも特に目立つのが、「とりあえず共有にした」「管理会社との契約内容がよく分からないまま引き継いだ」といった状態から問題が膨らむパターンです。相続人が多いほど合意形成が難しくなり、連絡が取れない人が一人でも出ると、売却も管理方針の変更も進められず、結果として空き家化することもあります。

さらに、2024年4月から相続登記が義務化され、相続した不動産の名義変更は「後回しでいい手続き」ではなくなりました。放置すると、後から手続きが重くなり、家族の負担が増える原因になります。

この記事では、不動産相続でトラブルが起きる理由を整理したうえで、分割方法ごとの注意点、相続登記・相続税(10ヶ月)でつまずかない段取り、そして相続後に見落としがちな管理会社の見直しポイントまで、実務目線でわかりやすく解説します。読み終える頃には、「家族で何を決めるべきか」「いつまでに何をやるべきか」が見える状態になるはずです。

 

この記事でわかること

この記事では、不動産相続がトラブルになりやすい理由を、共有名義のリスクや合意形成の難しさといった実務の視点から整理します。そのうえで、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割それぞれの特徴と注意点を比較し、ご家庭の状況に合う選び方ができるように解説します。

また、2024年4月に始まった相続登記義務化について、名義変更の考え方と手続きの流れを押さえ、放置した場合に起こりやすい“手続きの複雑化”も具体的にイメージできるようにします。加えて、相続税の納税資金が足りないときに「期限(10ヶ月)から逆算して」現実的に取り得る対応、相続後に増えがちな「管理会社との契約が分からない」問題への対処と、管理会社選びで見るべきポイントもまとめます。最終的には、相続トラブルを未然に防ぐために、家族で早めに話し合っておきたいテーマも整理します。

 

不動産相続トラブルが発生する理由

不動産相続トラブルが発生する理由の説明画像

不動産の相続が「揉めやすい」と言われるのは、相続人の性格や家族関係に原因があるからではありません。多くの場合、問題の根本は不動産という資産が持つ性質そのものにあります。現金のように簡単に分けることができず、分け方次第で将来の自由度や負担が大きく変わるため、判断が難しくなりやすいのです。

ここでは、不動産相続が複雑化しやすい主な理由を3つに整理します。原因を先に理解しておくことで、相続が発生したときに「後から後悔しやすい選択」を避けやすくなります。

複数の相続人による権利関係の複雑さ

不動産相続で特にトラブルになりやすいのが、相続人が複数いることで不動産が共有状態になりやすい点です。遺言書がない場合、遺産分割協議がまとまるまでの間、不動産は法律上、相続人全員の共有財産として扱われます。

共有になると、不動産の管理や修繕、賃貸、売却といった判断のたびに合意が必要になります。「売って現金で分けたい人」と「思い出があるから残したい人」がいるだけで、方針は簡単に固まりません。話し合いが長引くほど、決断を先送りにしやすくなります。

さらに注意したいのは、時間の経過とともに関係者が増えていく点です。相続人の一人が亡くなると、その持分は次の相続へと引き継がれ、甥や姪なども含めた共有状態になることがあります。こうなると、全員と連絡を取り、合意を得ること自体が難しくなり、結果として「売りたくても売れない」「管理の判断ができない」状態に陥りやすくなります。実務の現場でも、共有のままにしたことで最終的に合意が取れず、不動産が空き家化してしまうケースは少なくありません。

不動産の分割困難性と評価額の問題

不動産は、そもそも均等に分けることが難しい資産です。土地は分筆できたとしても、形や接道状況、日当たりなどによって価値に差が生じます。建物に至っては、物理的に分けることができません。

加えて、不動産には複数の評価基準が存在します。相続税評価、固定資産税評価、実勢価格など、どの価値を前提に話を進めるかによって、相続人の受け取り感は大きく変わります。特に、誰かが不動産を取得し、他の相続人に現金を支払う代償分割を検討する場面では、この評価のズレが不満につながりやすくなります。

「公平に分けたつもりでも、納得できない人が出てくる」。これは、不動産相続が現金よりも揉めやすい大きな理由です。簡単に等分できず、評価の前提が揃いにくいことが、話し合いを難しくしています。

相続手続きの知識不足によるリスク

相続は人生で何度も経験するものではないため、多くの人が十分な知識を持たないまま手続きを進めることになります。しかし、不動産相続では名義変更や税金、管理の判断などが絡み、自己判断で進めるほどリスクが高くなります。

代表的なのが、相続登記の後回しです。名義変更を先延ばしにすると、相続関係が複雑になり、後からまとめて対応しようとしたときに手続きや調整の負担が一気に大きくなります。売却や活用を考えた段階で初めて問題に気づき、思うように動けなくなるケースもあります。

また、相続税が発生する場合には、納税資金の準備も重要な課題です。不動産はすぐに現金化できないため、期限から逆算して準備ができていないと、時間に追われて不利な条件での売却を選ばざるを得なくなることもあります。実務では、相続開始後の限られた期間内に、相続手続きと資金確保の両方を進められるかを、事前に確認しておくことが重要とされています。

 

不動産相続で起こりがちなトラブル事例

不動産相続で起こりがちなトラブル事例の説明画像

不動産相続のトラブルは、特別な家庭だけで起きるものではありません。むしろ、「よくある判断」や「とりあえずの選択」がきっかけになって、後から問題が表面化するケースが目立ちます。ここでは、実務で見られやすい代表的なトラブル事例を紹介します。

共有名義にしたまま放置してしまうケース

相続人同士で話し合いがまとまらず、「ひとまず共有名義にしておこう」と判断されることがあります。一時的には対立を避けられるものの、その後の管理や活用の場面で問題が起きやすくなります。

共有状態では、不動産の売却や大きな修繕、活用方針の変更などに関係者全員の合意が必要になります。時間が経つにつれて相続人の一部と連絡が取れなくなったり、次の相続が発生して関係者が増えたりすると、意思決定がさらに難しくなります。その結果、不動産が使われないまま放置されてしまうケースも少なくありません。

相続登記を後回しにしたことで手続きが複雑化するケース

相続が発生しても、「今すぐ困らないから」と名義変更を後回しにしてしまうケースは珍しくありません。しかし、名義が被相続人のまま時間が経過すると、後から売却や活用を検討した際に、手続きの負担が一気に増えることがあります。

さらに、その間に相続人の一人が亡くなると、相続関係が重なり、関係者の範囲が広がります。結果として、書類の準備や合意形成に想定以上の時間と労力がかかることになり、「もっと早く対応しておけばよかった」と感じる場面につながりやすくなります。

不動産の評価をめぐって相続人の認識が食い違うケース

不動産は評価の考え方が一つではありません。そのため、相続人の間で「どの基準で価値を考えるか」が共有されていないと、不満や疑問が生じやすくなります。

特に代償分割を選んだ場合、不動産を取得する側と現金を受け取る側で納得感に差が出ることがあります。話し合いの段階では合意したつもりでも、後から「思っていた評価と違った」と感じ、関係が悪化してしまうこともあります。

そのほかにも起こりやすい相続トラブル

代表的なトラブル以外にも、不動産相続の現場では、判断の先送りや情報不足をきっかけに、さまざまな問題が生じることがあります。ここでは、実務で特に見られやすい補足的なトラブル事例を紹介します。

 

管理会社との契約内容が分からないまま引き継いでしまうケース

相続後、不動産そのものには目が向いても、管理会社との契約内容までは確認されないことがあります。親が契約していた管理会社を、そのまま内容を把握しないまま引き継いでしまうと、不要な費用を払い続けていたり、対応に不満を感じながらも変更できずにいたりする状況が生まれます。

相続人が不動産管理に慣れていない場合ほど、「よく分からないからそのままにしておく」判断が重なり、結果として負担が増えてしまうケースが見られます。

 

売却したい人と残したい人で意見が対立するケース

不動産相続では、「売却して現金化したい人」と「思い出があるから残したい人」の意見が対立することがあります。どちらの考えも間違いではないため、感情面の整理がつかず、話し合いが長期化しやすくなります。この状態で明確な方針を決めないまま時間が経つと、不動産は活用されず、管理コストだけがかかり続ける結果になりがちです。

 

トラブル事例に共通するポイント

これらの事例に共通しているのは、「その場しのぎの判断」と「先送り」です。相続が発生した直後は精神的にも余裕がなく、十分な検討ができないこともありますが、判断を後回しにするほど選択肢は狭まっていきます。

不動産相続では、早い段階で状況を整理し、分割方法や管理方針について話し合っておくことが、トラブルを防ぐ大きなポイントになります。

 

不動産の分割方法とそれぞれの注意点

不動産の分割方法とそれぞれの注意点の説明画像

不動産相続では、「どの分割方法を選ぶか」によって、その後の負担やトラブルの起きやすさが大きく変わります。分割方法にはいくつかの選択肢がありますが、どれが正解かは家族構成や不動産の状況によって異なります

ここでは代表的な分割方法と、それぞれの注意点を整理します。

現物分割|分かりやすいが、不公平感が残りやすい

現物分割とは、土地や建物をそのままの形で相続人ごとに分ける方法です。土地であれば分筆し、建物であればそれぞれ別の不動産を取得する形になります。

一見するとシンプルで納得しやすい方法ですが、不動産は形状や立地条件によって価値が大きく異なります。そのため、「形式的には分けたが、実質的な価値に差が出てしまう」ケースも少なくありません。

また、分筆した土地が使いづらくなったり、将来的に売却しにくくなったりするリスクもあります。現物分割を選ぶ場合は、将来の活用や処分まで見据えた検討が欠かせません。

代償分割|資金力と評価の考え方がポイントになる

代償分割は、特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に対して現金などで補償する方法です。不動産を一体で管理できるため、実務上は選ばれやすい分割方法です。

ただし、代償金を支払うための資金が必要になる点には注意が必要です。また、不動産の評価をどの基準で行うかによって、相続人の納得感に差が生じやすくなります。

話し合いの段階で評価の前提を共有しておかないと、後から「思っていた条件と違う」と感じる原因になりやすいため、慎重な合意形成が重要です。

換価分割|公平性は高いが、感情面の調整が欠かせない

換価分割は、不動産を売却し、得られた現金を相続人で分ける方法です。金額として分配できるため、公平性が高い点が特徴です。

一方で、「不動産を残したい人」と「売却したい人」の意見が対立しやすい側面もあります。特に思い出のある実家などでは、感情的な理由から話し合いが難航することもあります。

換価分割を検討する場合は、売却を前提とすることについて、相続人全員が納得できているかを丁寧に確認することが大切です。

共有分割|一時的な解決に見えて、将来の負担を残しやすい

共有分割は、不動産を売却も分割もせず、複数の相続人で共有名義にする方法です。遺産分割協議がまとまらない場合や、「今は決めきれない」という理由から選ばれることもあります。

ただしこの方法は、問題を解決したように見えて、実際には将来に負担を残しやすい点に注意が必要です。共有状態の不動産では、売却や大規模な修繕といった重要な判断を行う際に、関係者全員の合意が求められます。相続直後は話し合いができていたとしても、時間が経つにつれてそれぞれの生活環境や考え方が変わり、意見が揃わなくなるケースは少なくありません。

さらに、将来的に不動産を売却したくなった場合や、管理や修繕の判断を迫られた場面で、相続人の一人と連絡が取れなくなっていると、話し合いそのものが進まなくなることがあります。次の相続が発生すれば関係者はさらに増え、意思決定のハードルは一層高くなります。その結果、不動産を動かすことができないまま空き家化し、管理や税金の負担だけが残ってしまうこともあります。

共有分割を選ぶ際には、「今この場で合意できるかどうか」だけで判断するのではなく、数年後や次の世代に引き継がれたあとでも意思決定ができる状態を保てるか、という視点で考えることが欠かせません。その点を十分に検討せずに共有状態を選んでしまうと、後になって別の分割方法を選ぶべきだったと後悔する原因になりやすい分割方法といえるでしょう。

 

相続登記義務化への対応と名義変更手続き

2024年4月1日から、不動産の相続登記が法律上の義務となりました。これは、所有者不明土地問題を解消するための重要な法改正であり、すべての不動産所有者とこれから相続を迎える人々に関わるものです。

このセクションでは、相続登記義務化の具体的な内容、名義変更に必要な手続きの流れ、そして過去に相続したまま放置していた不動産にどう対処すべきかについて、分かりやすく解説します。法律を正しく理解し、適切な対応を取りましょう。

2024年4月施行の相続登記義務化の内容

2024年4月1日に施行された改正不動産登記法により、不動産の相続登記が法的に義務化されました。これは、所有者不明土地の発生を予防し、円滑な土地利用を促進することを目的とした、非常に重要な法改正です。この新しいルールを正しく理解し、期限内に対応することが求められます。

ポイントは、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記の申請をしなければならない、と定められた点です。つまり、被相続人が亡くなり、自分がその不動産を相続したと知った時から3年がタイムリミットとなります。この義務に正当な理由なく違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。「正当な理由」とは、例えば相続人が多数で戸籍謄本の収集に時間がかかる場合や、遺言の有効性をめぐって争いがある場合などが想定されていますが、単に「面倒だった」「知らなかった」という理由は認められない可能性が高いです。法務省は、この制度の周知を徹底しており、知らなかったでは済まされない状況になっています。

この義務化は、法律の施行日である2024年4月1日より前に発生した相続についても適用されます。過去に相続したものの、まだ名義変更をしていなかった不動産についても、施行日から3年以内、つまり2027年3月31日までに相続登記を完了させる必要があります。心当たりのある方は、早急に対応を検討しなければなりません。

この法改正は、相続不動産の放置がもたらす社会的損失を防ぐためのものです。過料という罰則を避けるためだけでなく、将来のトラブルを未然に防ぐためにも、相続が発生したら速やかに登記手続きを進めるという意識を持つことが重要です。

出典:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)|東京法務局

必要書類と手続きの流れ

相続登記を実際に行うには、いくつかの必要書類を収集し、定められた手順に沿って法務局に申請する必要があります。手続きは専門的で複雑に感じるかもしれませんが、流れを理解すれば、司法書士などの専門家にもスムーズに依頼できます。

まず、必要となる主な書類は以下の通りです。第一に、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。これにより、法定相続人が誰であるかを確定させます。次に、相続人全員の現在の戸籍謄本と住民票、そして対象不動産の固定資産評価証明書を用意します。遺言書がある場合はその遺言書、遺産分割協議を行った場合は相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と全員の印鑑証明書が不可欠です。これらの書類は、市区町村役場や法務局で取得します。

書類が揃ったら、次に「登記申請書」を作成します。この申請書に、不動産の情報や相続関係、登記の目的などを記載し、先に収集した書類を添付して、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。申請方法には、法務局の窓口に直接持参する方法、郵送する方法、そしてオンラインで申請する方法があります。申請後、法務局の登記官による審査が行われ、不備がなければ1週間から2週間程度で登記が完了し、「登記識別情報通知(いわゆる権利証)」が発行されます。

一連の手続きには、登録免許税(原則として固定資産評価額の0.4%)という税金や、司法書士に依頼する場合はその報酬がかかります。戸籍の収集や書類作成は煩雑な作業であり、不備があると何度も法務局に足を運ぶことになりかねません。そのため、時間的なコストや確実性を考慮すると、初めから司法書士に依頼するのが一般的で安心な方法と言えるでしょう。

過去の名義未変更物件への対処法

相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に発生した相続にも遡って適用されるという点が、非常に重要なポイントです。つまり、「祖父の代から名義が変わっていない」「親が亡くなってから10年以上経つが、まだそのままになっている」といった過去の名義未変更物件も、法律の対象となります。このような物件をお持ちの方は、早急な対応が求められます。

過去の相続案件に対処する上での最大の課題は、権利関係の複雑化と必要書類の収集の困難さです。時間が経過しているほど、二次相続、三次相続が発生し、相続人の数が膨れ上がっている可能性が高くなります。面識のない遠い親戚まで含めた全員の協力がなければ、遺産分割協議は成立しません。また、古い戸籍謄本は役所での保存期間(除籍から150年)が定められており、場合によっては取得が困難になるケースもあります。

このような状況を救済するため、法改正では「相続人申告登記」という新しい制度が設けられました。これは、遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続人の一人から「自分が相続人である」ということを法務局に申し出ることで、ひとまず登記義務を履行したとみなされる簡易的な手続きです。ただし、これは暫定的な措置であり、不動産の所有権が確定するわけではないため、売却などの処分はできません。最終的には、遺産分割を成立させて正式な相続登記を行う必要があります。

したがって、過去に遡る相続案件を抱えている場合は、まず専門家である司法書士に相談することをお勧めします。相続人の調査(戸籍の収集)から、他の相続人への連絡、遺産分割協議の調整、そして登記申請まで、複雑なプロセスをトータルでサポートしてくれます。放置すればするほど問題は深刻化します。義務化を機に、長年の懸案事項を解決する一歩を踏み出すことが賢明です。

 

相続税と不動産管理会社選びのポイント

不動産を相続すると、名義変更だけでなく、相続税の納付やその後の不動産管理という実務的な課題に直面します。特に相続税は計画的な準備が不可欠であり、管理会社の選定は将来の収益性を大きく左右します。

ここでは、相続税の基本的な考え方と納税資金の準備方法、そしてペルソナが抱えるコスト増や対応遅延といった悩みを解決する、賢い不動産管理会社の選び方について、具体的なポイントを解説します。

相続税評価と納付資金の準備方法

不動産を相続した場合、多くの人が直面する大きな課題が相続税です。相続税は、すべての相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合に申告と納付が必要になります。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算され、これを上回る部分に課税されます。計画的に準備を進めなければ、納税資金の不足という事態に陥りかねません。

まず重要なのが、不動産の相続税評価額を正しく把握することです。土地は「路線価方式」または「倍率方式」、建物は「固定資産税評価額」を基に評価されますが、土地の形状や利用状況によっては評価額を下げられる可能性があります。特に、被相続人が居住していた土地や事業を行っていた土地については、「小規模宅地等の特例」を適用できれば、評価額を最大で80%も減額できるため、適用要件を満たすかどうかを税理士などの専門家と確認することが極めて重要です。

次に、納税資金の準備方法です。理想的なのは、被相続人が生前に生命保険を活用して、死亡保険金を納税資金に充てられるように準備しておくことです。生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、受取人固有の財産として遺産分割協議の対象外となるため、スムーズに納税資金を確保できます。相続発生後に資金を準備する場合は、相続した不動産の一部を売却する、あるいはその不動産を担保に金融機関から融資を受ける(納税ローン)といった方法が考えられます。

相続税の申告・納付期限は10ヶ月と短いため、相続が発生したらすぐに税理士に相談し、財産評価と納税額のシミュレーションを行い、最適な節税策と納税プランを立てることが不可欠です。

定額制管理サービスによるコスト安定化

賃貸アパートやマンションを相続した場合、その後の管理をどうするかは大きな課題です。特に、自主管理の経験がある方や、これまでの管理会社の対応に不満を抱えている方にとって、管理コストの変動は経営上の大きな悩みとなります。従来の管理委託契約では、管理手数料が家賃収入の5%前後であることに加え、突発的な修繕や原状回復工事の費用が別途発生するため、月々の支出が不安定になりがちです。

この問題を解決する選択肢として注目されているのが、「定額制管理サービス」です。これは、毎月一定の料金を支払うことで、通常の管理業務に加えて、一定範囲内の原状回復費用や設備修繕費用までがカバーされるサービスです。例えば、給湯器の故障やエアコンの交換といった高額になりがちな修繕も、定額料金の範囲内で対応してくれるため、予期せぬ大きな出費のリスクをなくし、キャッシュフローを安定させることができます。

具体的には、月々のコストが平準化されることで、長期的な収支計画が立てやすくなるという大きなメリットがあります。サラリーマンオーナーのように、不動産経営に多くの時間を割けない方にとっては、費用の心配なく管理を専門家に一任できる安心感は計り知れません。また、24時間365日対応のコールセンターを設けているサービスを選べば、入居者からの緊急トラブルにも迅速に対応でき、入居者満足度の向上にもつながります。

管理会社を選ぶ際には、手数料の安さだけで判断するのではなく、こうした定額制サービスのように、長期的な視点でコストを安定させ、オーナーの負担を軽減してくれるプランがあるかどうかを確認することが、賢い選択と言えるでしょう。

売買仲介手数料を抑える方法

相続した不動産を最終的に売却(換価分割)することを選択した場合、不動産会社に支払う売買仲介手数料が大きなコストとなります。この手数料は、宅地建物取引業法によって上限が定められており、売買価格が400万円を超える場合、「売買価格の3% + 6万円(+消費税)」が一般的です。例えば、5,000万円の物件を売却した場合、仲介手数料の上限は171.6万円にもなります。

このコストを抑えるためには、いくつかの方法が考えられます。一つは、仲介手数料が上限よりも低く設定されている不動産会社を選ぶことです。近年では、業務の効率化などを理由に、「手数料半額」や「手数料1%」といった低廉な料金体系を打ち出す会社も増えています。ただし、手数料の安さだけで飛びつくのは危険です。なぜその料金が実現できるのか、販売活動の内容やサポート体制が手薄になっていないかを、しっかりと見極める必要があります。

もう一つの有効な方法は、賃貸管理から売却までをワンストップで提供している会社に任せることです。相続直後は賃貸で収益を得ながら、最適なタイミングで売却したい、というニーズは少なくありません。このような場合、同じ会社に一貫して任せることで、物件の状況を熟知した担当者がスムーズに売却活動に入れるだけでなく、管理契約から仲介契約への移行に際して、手数料の割引などの優遇を受けられる可能性があります。

特に、相続不動産に強い会社であれば、税理士や司法書士とも連携しており、相続手続きから賃貸管理、そして最終的な売却出口戦略までをトータルでサポートしてくれます。複数の専門家に個別に相談する手間が省け、結果的にトータルのコストと時間を節約できるのです。手数料という目先の金額だけでなく、提供されるサービスの質と範囲を総合的に判断することが、満足のいく売却を実現する鍵となります。

 

トラブルを未然に防ぐ事前対策

不動産相続のトラブルは、相続が発生してから対処しようとすると、時間も労力もかかりやすくなります。一方で、相続前から一定の準備をしておくことで、多くの問題は未然に防ぐことができます。重要なのは、制度を知ること以上に、「どこから手をつけるか」を間違えないことです。

まず優先したいのは、遺言書による意思の明確化

不動産相続トラブルを防ぐうえで、最初に取り組むべき対策として挙げられるのが遺言書の作成です。遺言書は、誰がどの不動産を引き継ぐのかを明確に示すことができ、相続人同士の解釈の違いや感情的な対立を防ぐ役割を果たします。

実務の現場でも、遺言書がある相続と、ない相続とでは、その後の話し合いの進み方が大きく異なります。特に不動産は分けにくい財産であるため、被相続人の意思がはっきり示されていることが、円満な相続につながります。

また、遺言書には財産の分け方だけでなく、「なぜその分け方にしたのか」「どのような思いで決めたのか」といった希望や背景を言葉として残すこともできます。こうした一言があることで、相続人が納得しやすくなり、不要な誤解や対立を防ぐことにもつながります。

家族信託や生前贈与は、遺言を補完する選択肢として考える

家族信託や生前贈与は、状況によっては有効な対策ですが、いきなり検討するものではありません。まずは遺言書によって基本的な方向性を固め、そのうえで必要に応じて検討する位置づけになります。

たとえば、将来的な認知能力の低下が心配な場合には、家族信託を活用することで、不動産の管理や処分をスムーズに行えるようになります。また、生前贈与は相続税対策として有効な場合もありますが、税務や登記のコストを含めて慎重な判断が必要です。

いずれの制度も、「使うこと」そのものが目的になると、かえって複雑な相続を招くことがあります。大切なのは、家族の状況や不動産の性質に合わせて、必要な手段を選ぶことです。

 

まとめ

不動産相続は、財産の金額が大きいから揉めるのではなく、分けにくさ・決めにくさ・先送りが重なることでトラブルに発展しやすい分野です。共有状態のまま放置された不動産や、方向性が決まらないまま時間が経過した相続は、後から調整しようとしたときに、かえって大きな負担となることがあります。

この記事で見てきたように、不動産相続のトラブルには一定のパターンがあります。相続人が複数いる状態で共有分割を選んでしまうこと、名義変更や管理の判断を先延ばしにすること、納税や売却の準備が十分でないまま期限を迎えてしまうことなどは、実務の現場でもよく見られる原因です。

一方で、これらの多くは事前の準備と話し合いによって防ぐことができます。まずは遺言書によって意思を明確にし、そのうえで必要に応じて家族信託や生前贈与を検討することが、無理のない対策の進め方といえるでしょう。そして何より重要なのは、相続が始まる前に、家族全員が資産の状況を把握し、方向性を共有しておくことです。

相続は、手続きの問題であると同時に、家族の関係性にも大きく影響する出来事です。判断に迷う場面があれば、一人で抱え込まず、司法書士や税理士、不動産の専門家に相談することで、現実的で無理のない選択肢が見えてきます。

この記事が、不動産相続に対する不安を整理し、次に何をすべきかを考えるきっかけになれば幸いです。
準備は早すぎて困ることはありません。できるところから、一歩ずつ進めていきましょう。