賃貸経営において、入居者との契約を終える場面で欠かせないのが「退去通知書」です。とはいえ、いざ自分で作成しようとすると、「どんな形式で書けばいいのか」「法的に問題はないだろうか」と不安を感じる大家さんも少なくありません。書き方や手続きに不備があると、退去交渉が長引いたり、思わぬトラブルに発展したりするおそれがあります。
この記事では、自主管理を行う大家さんや不動産オーナー様が、安心して退去手続きを進められるよう、退去通知書に盛り込むべき項目のチェックリストと、そのまま転記して使える文例をまとめています。お手元の書式や、インターネットで見つけたテンプレートが「最低限押さえるべきポイントを満たしているか」を、自分で確認できるようになることを目指したガイドです。
最後までお読みいただくことで、退去通知書の基本的な役割や法的な位置づけから、必須記載項目、文章の組み立て方、通知のタイミングや送付方法、トラブルが起きたときの考え方、そして管理会社との連携の仕方まで、一連の流れをひととおり把握できます。必要に応じて管理会社や専門家のサポートも活用しながら、ムリなく・ミスなく退去手続きを進めるための道しるべとしてご活用ください。
この記事でわかること
この記事では、賃貸物件の大家さんが入居者へ退去を通知する際に必要となる「書類」と「手続き」のポイントを、実務目線で整理しています。
まず、退去通知書に必ず記載しておきたい項目をチェックリスト形式でまとめ、そのうえで、文章のひな形として使える文例を紹介します。続いて、退去通知書が持つ法的な意味合いや、大家さん側から通知する場合に特に重要となる「正当事由」の考え方を、専門用語をかみ砕きながら解説します。
さらに、通知のタイミングや送付方法の選び方、入居者とのトラブルを未然に防ぐための対策、管理会社と連携するときの注意点まで、ステップを追って説明していきます。この記事1本で、「自分の書式・テンプレートが実務で問題なく使える状態になっているか」を確認できる構成です。
退去通知書テンプレートのチェックポイントと活用方法
退去通知の手続きをスムーズに進めるための第一歩は、「必要な情報が漏れなく、分かりやすく書かれている書式」を用意することです。ここでは、ファイルそのものを配布するのではなく、退去通知書がテンプレートとして機能しているかをチェックするための考え方と、ひな形として使える文面のポイントを整理します。
すでにお持ちの書式や、ネット上で入手したテンプレートでも、必要な項目がきちんと入っていれば十分に実務で使えます。この記事の「必須記載項目」の章をチェックリスト代わりに活用しながら、「自分のテンプレートはこの条件を満たしているか?」という視点で見直してみてください。不足している項目があれば、追記するだけで、より実務向きのフォーマットにブラッシュアップできます。
Wordテンプレートを見直すポイント
Word形式で退去通知書の書式を作成している大家さんや、管理会社からWordファイルで書式の提供を受けている方も多いはずです。Word書式を使うメリットは、物件ごとの事情や特約に合わせて、内容を柔軟にカスタマイズしやすい点にあります。
例えば、建物の老朽化に伴う建て替えの予定がある場合や、入居者とのあいだで口頭ベースの取り決めが多い場合など、一般的なテンプレートだけでは書き切れない事情が出てくることがあります。Word形式であれば、「解約の理由」「敷金・原状回復の取り扱い」「今後の連絡方法」など、必要に応じて追記・修正がしやすくなります。
この記事の「必須記載項目」や「文例と記入のポイント」で紹介する内容を参考にしながら、Wordで作成した自分用テンプレートにチェックを入れていくイメージで活用してみてください。複数物件をお持ちの大家さんであれば、基本形のテンプレートを1つ用意し、物件ごとにコピーして細部だけ変えていく運用が効率的です。
PDFテンプレートを見直すポイント
レイアウトを固定したい場合や、印刷して手書きで使うことが多い場合には、PDF形式の書式が便利です。PDFでフォーマットを固定しておけば、どの端末やプリンターから出力してもレイアウトが崩れにくく、相手方に渡したときの見た目も統一しやすくなります。
管理会社からPDFで書式を受け取っている場合や、自作のWord書式をPDFに変換して運用している場合は、印刷した用紙に手書きで記入するケースも多いでしょう。その場合でも、この記事のチェックリストに照らし合わせて「このPDFの書式に、必要な記載欄がすべて用意されているか」を確認しておくと安心です。
特に、解約日と明渡日の欄がきちんと分かれているか、物件情報の記載欄に「住所+建物名+号室」まで書けるスペースがあるか、連絡先や精算方法の記載欄が確保されているか、といった点は、PDFテンプレートを利用する際の重要なチェックポイントになります。
文例サンプルの上手な使い方
初めて退去通知書を作成する方にとっては、「どこに何を書けばいいか」が具体的にイメージできる記入例があると安心です。この記事では、後半で紹介する文例を、そのまま文章のモデル(サンプル)として使っていただけるように構成しています。
単に空欄が並んだテンプレートだけでは、「物件の表示はどこまで詳しく書くべきか」「解約日と明渡日の書き分け方はどうするか」といった細かな疑問が残りがちです。文例と照らし合わせながら、自分の書式に当てはめていくことで、「この表現で問題ないか」「ここは自分のケースに合わせて言い換えるべきか」を判断しやすくなります。
まずは文例を一度通して読み、全体の流れや言葉遣いのトーンを把握したうえで、ご自身の物件・事情に合わせてアレンジしてみてください。わかりにくい箇所や不安が残る部分があれば、管理会社や専門家にチェックを依頼することで、より安心して運用できる書式になります。
退去通知書の基本知識
退去通知書を正しく作成し、適切に運用するためには、その基本的な役割と法的な位置づけを理解しておくことが欠かせません。このセクションでは、退去通知書とは何か、どのような法的効力を持つのか、そして類似の書類との違いについて、基礎から整理していきます。
これらの知識は、単に書類を作るためだけでなく、入居者とのコミュニケーションをスムーズにし、将来のトラブルを未然に防ぐうえでの土台になります。法律の専門家でなくても、大家として最低限押さえておきたいポイントを、できるだけわかりやすくまとめていきます。
退去通知書とは
退去通知書とは、賃貸借契約を終了させたいという意思を、書面によって正式に伝えるための書類です。入居者から大家へ出す場合もあれば、大家から入居者へ出す場合もあり、いずれも「後で言った・言わないにならないようにするための証拠」としての役割を持ちます。
賃貸借契約は法律に基づく契約行為であり、その終了についても、いつ・どのような条件で終わらせるのかを明確にしておく必要があります。口頭だけのやり取りだと、「来月出ます」という一言が、具体的に何日を指すのか、敷金の取り扱いはどうするのか、といった点が曖昧になりやすく、トラブルの火種になりがちです。
退去通知書に、解約の意思、解約日、明渡日、物件情報などを具体的に記載しておくことで、当事者の認識のズレを減らし、契約終了までの流れを見える化できます。結果として、敷金精算や原状回復の話し合いも進めやすくなり、円滑な明け渡しにつながります。
法的要件と効力
退去通知書が法的に有効と認められるためには、いくつかの基本的な条件を満たしている必要があります。特に、大家側から一方的に契約の終了を申し入れる場合には、「借地借家法」という法律のルールを外さないことが非常に重要です。この法律は、立場の弱くなりやすい借主を保護する目的で、厳しめの条件を定めています。
大家からの解約通知で最も重要なのが、「正当事由」が必要だという点です。建物の著しい老朽化や、自ら居住する必要性、入居者の重大な契約違反など、理由にそれなりの客観性と必要性が求められます。また、普通借家契約の場合には、契約期間満了の1年前から6か月前までのあいだに、「更新しません」という通知を行わなければなりません。この期間を過ぎてしまうと、原則として契約は自動更新されたとみなされ、解約は格段に難しくなります。
大家側としては、「お願いベースの手紙」のつもりでも、法律的には厳格な要件がかかった書類になり得ます。正当事由と通知期間、この2つを外してしまうと、せっかく出した退去通知が法的に認められないおそれもあるため、十分な注意が必要です。不安があれば、自作のテンプレートだけで判断せず、管理会社や専門家のチェックを受けることも検討しましょう。
出典: e-Gov|法令検索 借地借家法
解約通知書との違い
実務では、「退去通知書」と「解約通知書」という言葉がほぼ同じ意味で使われることが多く、法律上の明確な区別はありません。どちらの名称であっても、「賃貸借契約を終わらせる意思表示の書面」という役割は同じです。
一般的には、入居者側が「部屋を出ます」と申し出るときの書類を「退去届」「退去通知書」と呼び、大家側が契約の終了や更新拒絶を伝える書類を「解約通知書」「賃貸借契約解約通知書」と呼ぶケースが多い傾向にあります。しかし、重要なのは表題ではなく、「誰が・誰に対して・どの物件について・いつ契約を終了させたいのか」がきちんと書かれているかどうかです。
大家さんが書類を作成する際も、「退去通知書」「解約通知書」「賃貸借契約終了に関するお知らせ」など、表題は大きな問題ではありません。それよりも、本文の内容が法律上の要件に沿っているか、この記事のチェックポイントと照らし合わせて確認しておくことのほうがはるかに重要です。
退去通知書の書き方
法的に有効で、かつ入居者との関係をこじらせずに退去を進めるためには、「何を書くか」と同じくらい「どう書くか」も大切です。必須項目を漏れなく押さえたうえで、伝わりやすく、角が立ちにくい表現を選んでいくことが、トラブル防止につながります。
このセクションでは、退去通知書に必ず入れておきたい項目と、文例の組み立て方、そして署名・捺印まわりの注意点を解説します。記事内のチェックリストと文例を組み合わせれば、お手元の書式や管理会社から提供されたテンプレートが、実務に耐えられる内容になっているかをセルフチェックすることができます。
必須記載項目
退去通知書に最低限盛り込んでおきたいのは、「誰が、どの契約を、いつ終わらせたいのか」が一目でわかる情報です。これが抜けていると、後から通知の有効性そのものが争われる可能性があります。
基本的なチェックポイントは、次のとおりです。
◾️ 知書の作成日
◾️ 宛名(入居者の氏名)
◾️ 差出人(大家の氏名・住所・連絡先)
◾️ 対象物件の情報(住所・建物名・部屋番号)
◾️ 賃貸借契約の締結日(または契約の特定ができる情報)
◾️ 契約の解約日
◾️ 物件の明渡日
◾️ 解約の理由(大家から通知する場合)
◾️ 敷金や精算方法に関する事項
物件を複数所有している場合、物件情報があいまいだと「どの物件の話か」が不明確になりがちですし、解約日と明渡日を分けて記載しておくことで、「契約はこの日まで/引っ越し作業はこの日まで」といった整理がしやすくなります。大家側からの通知であれば、解約の理由を書面に残しておくことは、「正当事由」を説明するうえでも重要です。
お手元の書式やテンプレートに、上記の項目を書き込める欄があるかどうかを、まずチェックしてみてください。足りない項目があれば、追記するだけでも通知書としての完成度は大きく高まります。
文例と記入のポイント
退去通知書は法律に関わる文書であると同時に、入居者へ大きな生活の変化を求めるお知らせでもあります。そのため、事務的な内容をしっかり押さえつつ、できる限り丁寧な言葉遣いを心がけることが大切です。高圧的な表現や、一方的な命令口調は避けましょう。
大家側の事情で解約をお願いする場合には、文頭で簡単な挨拶と日頃の感謝を伝えたうえで、理由とお願いの内容に入っていく構成がおすすめです。例えば、
「平素は当物件の管理にご協力いただき、誠にありがとうございます。」
「さて、このたび下記物件につきまして、建物の老朽化に伴う建て替え計画により、誠に勝手ながら契約の解約をお願いしたく、本書面にてご通知申し上げます。」
といった形で、挨拶→感謝→事情説明→お願い、という流れを意識すると、相手にも意図が伝わりやすくなります。
この記事で紹介する文例は、そのまま写して使うこともできますが、あくまで「型」として捉え、ご自身の状況に合わせて言い回しを調整することをおすすめします。不安な場合は、完成した文面を管理会社に見てもらい、問題がないか確認してもらうと安心です。
捺印と署名の注意点
退去通知書に押された署名・捺印は、「間違いなく本人の意思で作成された書類である」ということを示す大事な要素です。デジタル化が進んだとはいえ、不動産まわりの重要な書類では、いまだに署名・捺印が重視される場面が少なくありません。
差出人欄には、できるだけ自筆で署名し、賃貸借契約書に使用したものと同じ印鑑で捺印するのが望ましいとされています。ゴム印などで氏名を印字した場合でも、本人がきちんと押印していることが重要です。
また、入居者から受け取る返信書や受領書などを用意しておき、そこに入居者の署名・捺印をもらっておくと、「通知を確かに受け取り、内容を認識している」という証拠になります。ここまで整えておくと、後々のトラブル予防の効果は大きくなります。
大家の退去通知の出し方
どれだけ丁寧に退去通知書を作成しても、送るタイミングや方法を誤ると、法的な効力が弱まってしまったり、入居者との信頼関係を損ねてしまう可能性があります。
ここでは、大家側から退去を通知する際に押さえておきたい、「いつ出すか」というタイミングと、「どうやって送るか」という送付方法のポイントを整理します。計画的に動くことで、交渉をスムーズに進めやすくなります。
通知タイミングの決め方
大家から退去を求める場合、普通借家契約であれば、借地借家法に定められた通知期間を守ることが絶対条件になります。具体的には、契約期間が決まっている場合、契約満了日の1年前から6か月前までのあいだに、「更新しません」という意思表示を行う必要があります。
この期間が設けられているのは、借主側に次の住まいを探すための準備期間を確保するためです。6か月前を過ぎてしまうと、契約は原則としてこれまでと同じ条件で自動更新されたとみなされ、大家からの解約申入れは格段にハードルが上がります。
実際に通知を出す際は、賃貸借契約書に記載されている契約期間満了日を確認し、そこから逆算してスケジュールを組むことが重要です。郵送にかかる日数や、内容の確認に要する時間も踏まえて、「6か月前ギリギリ」ではなく、少し余裕をもって準備を進めるようにしましょう。
送付方法の選択
退去通知書の送付方法を決めるときは、「相手に届いたことをどの程度まで証明できるか」という視点が大切です。主な選択肢としては、普通郵便、特定記録郵便、簡易書留、内容証明郵便などがあります。
もっとも手軽なのは普通郵便ですが、配達の記録が残らないため、トラブルを避けたい重要な通知には向きません。特定記録郵便や簡易書留であれば、郵便物の引受や配達状況を確認でき、簡易書留なら受領印も残るため、到達の証明力は高まります。
入居者との関係が良好で、大きなトラブルになる可能性が低い場合は、特定記録郵便など、比較的ライトな方法を選ぶこともあります。一方で、滞納が続いている・すでにトラブルが顕在化しているといったケースでは、後で「そんな通知は受け取っていない」と言われないよう、より証拠力の高い送付方法を検討した方が安心です。
内容証明郵便の活用
内容証明郵便は、「いつ・誰から・誰に・どのような内容の文書を送ったのか」を郵便局が証明してくれる制度です。退去通知において、もっとも強力な証拠能力を持つ送付方法と言えます。
家賃滞納が続いている入居者に対する契約解除通知や、建て替えなどを理由とした退去要請など、相手が簡単には応じてくれないことが見込まれる場面では、内容証明郵便の利用が選択肢に入ってきます。内容証明郵便で通知が届くと、入居者側も「正式な手続きが進み始めている」と受け止めざるを得ず、無視しにくい状況になります。
一方で、内容証明郵便は通常の郵便より費用がかかることに加え、相手に強いプレッシャーを与えやすい面もあります。関係悪化を避けたい場合には、いきなり内容証明を使うのではなく、管理会社や弁護士と相談しながら、どのタイミングでどの手段を使うのが適切かを検討するとよいでしょう。配達証明を付ければ、相手が受け取った日付まで証明できるため、法的にきちんと整理しておきたいケースでは有力な選択肢になります。
退去通知のトラブル対策
どれだけ慎重に手続きを進めても、退去通知をめぐるトラブルが完全にゼロになるとは言い切れません。ただし、「よくある失敗パターン」と「対応の基本」を事前に押さえておくことで、多くのリスクは軽減できます。
このセクションでは、大家さんが陥りやすいミスや、入居者から退去を拒否された場合の基本的な考え方、長い目で見たときのリスク管理のポイントを紹介します。
よくある失敗パターン
退去通知に関するトラブルの多くは、法律や契約内容に対する理解不足から生じています。代表的なものとしては、次のようなパターンが挙げられます。
◾️ 通知のタイミングを誤り、6か月前を切ってから更新拒絶の通知をしてしまう
◾️ 大家側の都合だけを理由にしてしまい、「正当事由」として十分とは言えない内容になっている
◾️ 物件情報や解約日などの記載漏れがあり、「どの契約をいつ終わらせたいのか」が不明瞭になっている
これらは、事前に賃貸借契約書と借地借家法の基本ルールを確認し、退去通知書の内容を落ち着いてチェックすることで、ある程度は防ぐことができます。この記事のチェックリストを使いながら、「本当にこの内容で問題がないか?」を一度立ち止まって見直す習慣を持つことが大切です。
入居者からの拒否対応
正しい手順で退去通知を出しても、入居者が納得できず、退去を拒むケースはあり得ます。このような場合、まず大切なのは、感情的にならずに相手の話を聞き、何に不安や不満を感じているのかを整理することです。
入居者側の主な懸念としては、「正当事由に納得できない」「引っ越し費用や新居の初期費用など、経済的な負担が大きい」といった点が多く見られます。大家側の事情だけを一方的に伝えるのではなく、「立退料」として一定の金銭補償を検討することで、話し合いが前に進むケースも少なくありません。
それでも話し合いがまとまらない場合や、すでに関係が悪化している場合には、個人で対応し続けるのはリスクが高くなります。管理会社や弁護士に相談し、第三者を交えて冷静に整理していくことを検討しましょう。
法的リスクの回避方法
退去通知に関する法的リスクを根本的に減らすためには、「問題が起きてから対処する」のではなく、「問題が起きにくい状態を日頃からつくっておく」ことが重要です。
具体的には、
◾️ 賃貸借契約書の内容を定期的に見直し、最新の法令や実務に合っているか確認する
◾️ 入居者との日常的なコミュニケーションを大切にし、小さな不満やトラブルの芽を早めに拾う
◾️ 将来的に建て替えなどの予定がある場合は、早い段階から方針を整理し、定期借家契約の検討なども視野に入れる
といった取り組みが挙げられます。こうした予防的な対応は、すぐに成果が見えにくい一方で、長期的には大きなリスク低減につながります。自分だけで抱え込まず、管理会社と情報を共有しながら進めていくことも大切です。
管理会社との連携ポイント
自主管理をしている大家さんであっても、退去通知のように法的な判断が絡む場面では、管理会社や専門家のサポートを受けることで、ぐっと安心感が高まります。とくに、初めて大家業をされる方や、トラブルになりそうな案件を抱えている場合には、書類の作成や送付方法を一緒に確認してもらうだけでも大きな助けになります。
ここでは、管理会社と連携する際の基本的なポイントを整理します。
役割分担の明確化
まず大切なのは、「どこからどこまでを誰が担当するのか」をあらかじめはっきりさせておくことです。退去通知書の作成を大家が行い、送付や入居者対応を管理会社が担当するのか、それとも、文面の作成から交渉までを一括して管理会社に任せるのかによって、やるべきことは変わります。
管理委託契約の内容や、管理会社ごとのサービス範囲によっても扱いが異なるため、「退去通知に関する業務が、どこまで委託範囲に含まれているか」を事前に確認しておきましょう。必要であれば覚書などで具体的な役割分担を書面にしておくと、後々の認識違いを防ぎやすくなります。
この記事で紹介しているチェックリストや文例は、大家さん自身が書式を整えるときにはもちろん、「管理会社が用意した書式の内容を理解するための参考資料」としても活用できます。
情報共有のタイミング
管理会社とスムーズに連携するためには、「いつ、どのタイミングで情報を共有するか」も重要です。
退去通知に関しては、
◾️ 通知を出す前に、背景事情や今後の方針を共有しておく
◾️ 通知を発送した直後に、その事実と発送方法を伝えておく
という2つのタイミングでの報連相が特に大切です。事前に相談しておけば、「この入居者さんはこういう性格なので、まずは口頭で事情を説明してから書面を送ったほうが良いかもしれません」といった実務的なアドバイスがもらえることもあります。
一方で、通知を出した後に報告がないと、入居者から問い合わせがあったときに管理会社が状況を把握できず、対応が後手に回ってしまいます。管理会社を「作業をお願いする相手」ではなく、「賃貸経営を一緒に支えるパートナー」と捉え、こまめに情報共有することが、結果的に大家さん自身を守ることにもつながります。
費用負担の取り決め
退去交渉が長期化したり、内容証明郵便の利用や弁護士への相談が必要になったりすると、通常の管理委託料とは別の費用が発生することがあります。
そのため、「どのような対応をとった場合に、誰がどの費用を負担するのか」をあらかじめ話し合っておくと安心です。たとえば、
◾️ 内容証明郵便の作成・発送費用
◾️ トラブル対応に関する追加手数料
◾️ 弁護士への相談料や着手金
◾️ 立退料を支払う場合の負担範囲
などについて、想定されるパターンをいくつか挙げながら確認しておくと、後から「そこまでは聞いていない」という行き違いを防ぎやすくなります。取り決めは、できるだけ書面に残しておくとより安心です。
まとめ
本記事では、大家さん向けに、退去通知書の基本知識から、必須項目のチェックリスト、文例の組み立て方、通知のタイミングや送付方法、トラブルへの備え方、管理会社との連携ポイントまで、退去通知に関する一連の流れを整理してきました。
退去通知は、賃貸経営の中でもとくに神経を使う場面ですが、ポイントを押さえて準備をしておけば、決して乗り越えられない手続きではありません。大切なのは、借地借家法に定められたルール(通知期間や正当事由)を意識しつつ、書面でしっかり証拠を残し、入居者への配慮も忘れないことです。
この記事で紹介したチェックリストや文例は、あくまでも大家さんが状況を整理しやすくするための「たたき台」です。最終的な文面や対応について不安がある場合は、無理に自作テンプレートだけで完結させようとせず、管理会社や弁護士など専門家の力を借りることを強くおすすめします。そのほうが、結果的に時間とコストの無駄を減らし、法的リスクも小さくできます。
退去通知の経験は、大家としての引き出しを大きく増やしてくれます。この記事が、その一歩を踏み出す際のガイドとして、少しでもお役に立てば幸いです。