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ゴミ屋敷で強制退去はできる?認められる条件と手続き・費用を解説

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賃貸物件を所有するオーナーにとって、入居者の部屋がゴミ屋敷化する問題は、近隣トラブルや資産価値の低下に直結する深刻なリスクです。

ただし、ゴミ屋敷を理由にした強制退去は最終手段であり、裁判所に認められるためには厳格な条件と適切な手続きが求められます。

この記事では、強制退去が認められる法的な条件と、注意から強制執行までの実務的な流れ、費用と期間の目安までを整理し、オーナーが誤った対応で不利にならないためのポイントを解説します。

 

この記事でわかること

この記事では、ゴミ屋敷を理由に退去を求めたいときに、強制退去がどのような条件で認められるのかを整理します。

あわせて、注意や改善要求から契約解除、明け渡し請求訴訟、強制執行までの流れを具体的に説明し、各段階で必要になりやすい記録や証拠の残し方も扱います。

さらに、手続きにかかる費用と期間の目安、原状回復費用を請求する際の注意点、オーナーが違法になりやすい対応を避けるためのポイントも確認し、最終的に損失を最小化するための管理体制の考え方までまとめます。

 

ゴミ屋敷を理由に強制退去させる条件

ゴミ屋敷を理由に強制退去させる条件の要約画像

ゴミ屋敷状態の入居者を退去させたいと考えても、法律上は簡単に追い出すことはできません。強制退去が認められるためには、一定の法的要件を満たす必要があります。

日本の借地借家法では、入居者の居住権が強く保護されています。そのため、オーナーが一方的に契約を解除することは原則として認められていません。強制退去を実現するためには、法的な手続きを適切に踏む必要があります。

強制退去が認められる法的根拠

ゴミ屋敷を理由として入居者を強制的に退去させるためには、賃貸借契約における義務違反があったことを法的に示す必要があります。判断の基準となるのは、民法に定められた賃借人の義務に違反しているかどうかです。

民法第594条第1項では、賃借人は契約または目的物の性質によって定まった用法に従って使用しなければならないとされています。住居として賃貸された部屋を、大量のゴミを保管する目的で使用する行為は、本来の用法から逸脱していると評価される可能性があります。

また、民法では賃借人に対して善良な管理者の注意をもって目的物を管理する義務が課されています。ゴミを長期間放置することで建物を損傷させたり、害虫や悪臭を発生させたりする行為は、この義務に違反すると判断されることがあります。
実務上は、これらの義務違反が客観的な証拠によって裏付けられているかどうかが重視され、オーナーの主観的な判断だけでは足りないとされています。

信頼関係破壊の法理とは

賃貸借契約の解除が認められるかどうかを判断する際に、裁判所は「信頼関係破壊の法理」という考え方を用います。これは、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破壊されたといえる程度の背信行為があったかどうかで判断するというものです。

賃貸借契約は継続的な関係を前提とした契約であり、当事者間の信頼関係が基盤となっています。そのため、軽微な契約違反があっただけでは、すぐに契約を解除することはできません。信頼関係が破壊されたといえるほどの重大な違反があって初めて、解除が認められます。

ゴミ屋敷のケースでは、単に室内が散らかっているという程度では信頼関係の破壊とは認められにくいです。しかし、近隣住民に具体的な被害が生じている場合や、オーナーからの再三の改善要求を無視し続けている場合などは、信頼関係が破壊されたと判断される可能性が高まります。

過去の裁判例では、悪臭や害虫の発生により近隣住民の生活に支障が出ているケース、共用部分にまでゴミがあふれ出しているケース、オーナーの度重なる警告を無視して改善しなかったケースなどで、信頼関係の破壊が認められています。

用法遵守義務違反に該当するケース

用法遵守義務とは、賃借人が物件を本来の目的に従って使用する義務を指します。住居として借りた部屋は、居住のために適切に使用されることが前提となります。

室内に大量のゴミが堆積し、床が見えない状態が長期間続いている場合や、ゴミの重みで床や壁に損傷が生じている場合は、用法遵守義務に違反していると判断されやすくなります。さらに、生ゴミの腐敗による悪臭が廊下や隣室にまで及んでいる場合や、害虫や害獣が発生して他の住戸に被害が広がっている場合も同様です。

裁判では、こうした状態が一時的なものか、長期間にわたって継続していたかも重要な判断要素になります。そのため、写真や動画、近隣住民からの苦情記録を時系列で残しておくことが、義務違反を立証するうえで実務上は欠かせません。

強制退去が認められないケース

強制退去が認められるかどうかは、裁判所が契約違反の程度と入居者の居住権の保護とのバランスをどのように評価するかによって判断されます。ゴミ屋敷といえる状態であっても、建物への損傷や近隣への具体的な被害が確認できない場合には、生活態様の問題にとどまるとして退去請求が認められないことがあります。

また、オーナー側が十分な改善の機会を与えずに、いきなり契約解除や訴訟に踏み切った場合も、対応が相当でないとして退去請求が否定される可能性があります。裁判所は、オーナーがどのような手順を踏み、どの程度入居者との話し合いを行ったかを重視します。

入居者に精神疾患や認知症などの事情がある場合には、福祉的な支援との調整が求められるケースもあり、単純に契約違反として扱えないことがあります。

 

ゴミ屋敷の強制退去までの具体的な流れ

ゴミ屋敷の強制退去までの具体的な流れの要約画像

ゴミ屋敷状態の入居者を退去させるためには、法的に正しい手順を踏む必要があります。いきなり訴訟を起こすのではなく、段階的に対応を進めていくことが重要です。

一般的な流れとしては、まず口頭や書面での注意から始まり、内容証明郵便での通達、契約解除通知、訴訟提起、そして強制執行という順序で進んでいきます。それぞれの段階で適切な対応を行うことで、最終的に裁判所に認めてもらえる可能性が高まります。

口頭・書面による注意と改善要求

ゴミ屋敷の問題が発覚した場合、まず行うべきは入居者への注意と改善要求です。いきなり法的手段に訴えるのではなく、まずは話し合いによる解決を試みることが大切です。

最初は口頭で注意を行い、状況の改善を求めます。このとき、感情的にならず、具体的にどのような状態が問題なのか、どのように改善してほしいのかを明確に伝えます。近隣住民から苦情が来ていることや、このままでは契約違反になる可能性があることも説明します。

口頭での注意で改善が見られない場合は、書面での改善要求に移ります。書面には、問題となっている具体的な状況、改善を求める内容、改善の期限を明記します。この書面は後日の証拠となるため、日付を入れ、コピーを保管しておきます。

改善要求は一度だけでなく、複数回にわたって行うことが重要です。裁判所は、オーナー側が十分な改善の機会を与えたかどうかを重視します。いつ、どのような注意を行い、入居者がどのような反応を示したかを記録しておくことで、後の訴訟で有利な証拠となります。

内容証明郵便での通達文送付

口頭や一般の書面での注意で改善が見られない場合は、内容証明郵便を使って正式な通達を行います。内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれるものです。

内容証明郵便には、これまでの経緯、現在の問題状況、改善を求める具体的な内容、改善の期限、期限までに改善されない場合は契約解除を検討する旨を記載します。法的な効力を持つ文書となるため、弁護士に作成を依頼することをおすすめします。

内容証明郵便を送付することで、入居者に対して「これは深刻な問題である」という認識を持たせることができます。また、オーナー側が法的手続きを視野に入れていることを示すことで、入居者が自主的に退去を決断するきっかけになることもあります。

内容証明郵便を送付した後も、すぐに訴訟に移るのではなく、設定した期限までは入居者の対応を待ちます。期限までに改善が見られた場合は、その後の状況を見守りながら経過観察を続けます。改善が見られない場合は、次の段階である契約解除通知に進みます。

賃貸借契約の解除通知

内容証明郵便での通達後も改善が見られない場合、賃貸借契約の解除を行います。契約解除の通知も内容証明郵便で行い、確実に相手に届いたことを証明できるようにします。

契約解除通知には、契約解除の意思表示、解除の理由となる事実(ゴミ屋敷状態であること、これまでの改善要求とその結果など)、明け渡し期限を記載します。解除通知が届いた時点で契約は終了しますが、入居者が自主的に退去しない場合は訴訟が必要になります。

契約解除が有効に成立するためには、これまでの経緯が重要です。十分な改善の機会を与えていたか、信頼関係の破壊といえる程度の違反があったかが問われます。そのため、契約解除通知を送る前に、弁護士に相談して法的な要件を満たしているか確認することが大切です。

契約解除通知を送付しても入居者が退去しない場合は、明け渡し請求訴訟を提起することになります。この段階に入ると、専門家のサポートがより一層重要になってきます。

明け渡し請求訴訟の提起

契約を解除しても入居者が退去しない場合には、裁判所に対して明け渡しを求める手続きを行います。いわゆる明け渡し請求訴訟では、ゴミ屋敷の状態そのものではなく、それによってどのような契約違反や周囲への影響が生じていたかが重視されます。

オーナー側は、ゴミ屋敷状態を示す写真や動画、近隣住民からの苦情記録、改善要求を行ってきた経緯を示す書面などを証拠として提出します。裁判所は、これらの資料をもとに、信頼関係が破壊されたといえる事情があるかどうかを判断します。

強制執行の申立てと実施

裁判所の判決が出ても入居者が退去しない場合は、裁判所の権限に基づいて執行官が関与する強制執行によって明け渡しを実現します。これは、オーナー自身が直接入居者を排除するものではなく、法的に定められた手続きに沿って行われるものです。

強制執行は、判決の確定後に申し立てを行い、執行官が明け渡しの催告を行ったうえで実施されます。入居者の意思に関わらず執行されますが、その権限は裁判所に基づくものであり、オーナーが独自に行う行為とは明確に区別されます。

 

ゴミ屋敷の強制退去にかかる費用と期間

ここからは、強制退去を視野に入れた場合に避けて通れない費用と期間の見通しを整理します。

ゴミ屋敷問題の解決には、相応の費用と期間がかかります。法的手続きを進める前に、どの程度のコストと時間を見込んでおくべきか把握しておくことが重要です。

費用については、訴訟費用、弁護士費用、強制執行費用、原状回復費用などが発生します。期間については、問題の発覚から最終的な解決までに半年から1年以上かかることも珍しくありません。

訴訟・法的手続きの費用目安

ゴミ屋敷の強制退去に関する法的手続きには、さまざまな費用が発生します。具体的な金額は事案によって異なりますが、一般的な目安を把握しておくことが大切です。

まず、内容証明郵便の作成・送付には数千円程度の費用がかかります。弁護士に作成を依頼する場合は、別途弁護士費用として1万円から3万円程度が加算されることもあります。訴訟を提起する際には、訴状に収入印紙を貼付する必要があり、訴額に応じて数千円から数万円程度となります。

弁護士費用については、着手金と成功報酬に分かれるのが一般的です。着手金は20万円から40万円程度、成功報酬は回収できた金額や物件の明け渡しが完了した場合に発生し、20万円から50万円程度が相場となっています。弁護士によって料金体系は異なるため、事前に見積もりを取ることが重要です。

強制執行を行う場合は、執行官への予納金として数万円、搬出業者への費用として10万円から30万円程度、荷物の保管費用として月額数千円から数万円程度がかかります。これらを合計すると、訴訟から強制執行までに50万円から100万円以上の費用がかかることも想定されます。

退去までに必要な期間

ゴミ屋敷の問題が発覚してから入居者が完全に退去するまでには、相当の期間を要します。すべてがスムーズに進んだ場合でも、最短で半年程度はかかると考えておいたほうがよいでしょう。

まず、口頭や書面での注意・改善要求の段階で1ヶ月から2ヶ月程度を見込みます。この間に複数回の注意を行い、入居者に改善の機会を与えます。内容証明郵便の送付と改善期限の設定でさらに1ヶ月程度を要します。

訴訟を提起してから判決が出るまでには、通常3ヶ月から6ヶ月程度かかります。被告である入居者が争う姿勢を見せた場合や、審理が長引く場合は、さらに長期化することもあります。判決が確定してから強制執行までに1ヶ月から2ヶ月程度かかります。

これらを合計すると、問題発覚から退去完了までに6ヶ月から1年程度、長い場合は1年以上かかることも珍しくありません。この間、他の入居者への影響や家賃収入の減少が続くため、早期に専門家に相談して対応を進めることが重要です。

原状回復・ゴミ処理費用の目安と考え方

原状回復費用の負担区分については、国土交通省が公表している原状回復に関するガイドラインが判断の基準とされています。ゴミ屋敷の場合であっても、このガイドラインに基づき、通常使用による劣化か、入居者の故意や過失による損耗かを区別したうえで費用負担が判断されます。

ゴミの処理費用や清掃費用は、室内に堆積しているゴミの量や種類、作業人数、搬出経路の条件などによって大きく異なります。軽度なケースであれば比較的少額で済むこともありますが、ゴミが大量に堆積している場合や悪臭、害虫の発生が確認されている場合には、通常の退去時清掃を大きく上回る費用がかかることも珍しくありません。

また、ゴミの撤去に加えて、害虫駆除や消臭処理、床や壁の補修が必要になるケースもあり、原状回復費用が高額になる傾向があります。とくに、長期間放置されていたゴミ屋敷では、作業範囲が広がりやすく、結果として費用の幅も大きくなります。

これらの費用は原則として入居者に請求できる可能性がありますが、請求できる範囲は入居者の行為によって生じた損害に限られます。どこまでが請求対象となるかは、実際の室内状況や作業内容をもとに個別に判断されるため、見積書や作業内容の記録を残しておくことが重要です。

 

退去費用を入居者に請求する方法

強制退去まで進んだ場合でも、原状回復費用を誰がどこまで負担するかは別問題として残り、回収の可否がオーナーの損失を左右します。

ゴミ屋敷の原状回復にかかった費用は、原則として入居者に請求することができます。ただし、請求できる範囲には限りがあり、また実際に回収できるかどうかは別の問題です。

費用を確実に回収するためには、請求できる費用の範囲を正確に把握し、連帯保証人への請求も視野に入れて対応を進める必要があります。

請求できる費用の範囲

入居者に請求できる費用は、入居者の故意または過失によって生じた損害に限られます。通常の使用による経年劣化は、入居者の負担にはなりません。この原則はゴミ屋敷のケースでも同様です。

具体的に請求できる可能性が高い費用としては、ゴミの処理・搬出費用、害虫駆除費用、消臭処理費用などが挙げられます。また、ゴミの放置によって生じた壁紙のカビや床材の腐食など、入居者の行為に起因する損傷の修繕費用も請求対象となります。

一方、設備の経年劣化による交換費用や、通常の使用でも生じる程度の汚れに対するクリーニング費用は、入居者に請求することは難しいです。どこまでが入居者の負担でどこまでがオーナーの負担かは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に判断されます。

費用を請求する際には、見積書や領収書などの証拠書類を揃えておくことが重要です。また、請求書には内訳を明記し、なぜその費用が入居者の負担になるのかを説明できるようにしておきます。

出典:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

連帯保証人への請求

入居者本人に支払い能力がない場合は、連帯保証人に対して費用を請求することができます。連帯保証人は、入居者と同じ責任を負っており、入居者に代わって債務を支払う義務があります。

連帯保証人への請求は、まず書面で行います。請求書には、発生した費用の内訳、請求金額、支払期限、支払い方法を明記します。連帯保証人が個人の場合、2020年4月の民法改正以降に締結された契約では、保証額の上限(極度額)が設定されているため、その範囲内での請求となります。

連帯保証人が支払いに応じない場合は、入居者と同様に訴訟を提起して回収することになります。ただし、連帯保証人も資力がない場合は、訴訟を起こしても回収が困難なこともあります。保証会社を利用している場合は、保証会社に対して請求を行います。

連帯保証人への請求を行う際には、入居者との契約内容や保証契約の内容を確認し、請求可能な範囲を把握しておくことが大切です。不明な点がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

費用回収が困難なケースの対処法

入居者にも連帯保証人にも支払い能力がない場合、費用の回収は非常に困難になります。このような場合の対処法を知っておくことで、少しでも損失を軽減できる可能性があります。

まず、入居者や連帯保証人に資産がある場合は、強制執行によって差し押さえを行うことができます。給与や預金、不動産などが差し押さえの対象となります。ただし、差し押さえには費用と手間がかかるため、回収できる金額と比較して判断する必要があります。

入居者が自己破産した場合は、原則として債権の回収は不可能になります。ただし、故意による不法行為に基づく損害賠償請求権は、破産しても免責されない可能性があります。この点については弁護士に確認することをおすすめします。

費用の回収が困難な場合は、損失を確定申告で経費として計上することで、税負担を軽減できる場合があります。また、今後の対策として、保証会社の加入を必須とする、敷金を適切に設定するなどの見直しを行うことが重要です。

 

ゴミ屋敷対応で大家がやってはいけないこと

ゴミ屋敷の問題に直面したとき、一刻も早く解決したいという気持ちは理解できます。しかし、対応を誤ると逆にオーナー側が違法行為を問われるリスクがあります。

絶対にやってはいけない対応を事前に把握しておくことで、トラブルをさらに悪化させることを防ぎましょう。

ゴミを勝手に処分する

入居者の部屋に溜まったゴミを、オーナーが勝手に処分することは絶対にやってはいけません。たとえゴミにしか見えないものでも、法律上は入居者の所有物として扱われます。

入居者の許可なく物を処分した場合、器物損壊罪や窃盗罪に問われる可能性があります。また、民事上も不法行為として損害賠償を請求されるリスクがあります。ゴミの中に入居者にとって価値のあるものが含まれていた場合、その価値に応じた賠償を求められることもあります。

強制執行が完了するまでは、入居者の占有権が法的に保護されています。どれだけゴミが溜まっていても、どれだけ近隣に迷惑がかかっていても、法的な手続きを経ずに処分することは許されません。

緊急性が高い場合でも、まずは弁護士や管理会社に相談し、適切な対応方法を確認してください。勝手な対応は、せっかく進めてきた法的手続きを無効にしてしまう可能性もあります。

鍵交換や入室制限をする

入居者を追い出すために、オーナーが勝手に鍵を交換したり、入室を制限したりすることも違法行為です。これは「自力救済」と呼ばれ、日本の法律では原則として禁止されています。

たとえ家賃を滞納していても、たとえゴミ屋敷状態であっても、入居者には居住する権利があります。その権利を奪うことができるのは、裁判所の判断によってのみです。オーナーが自分の判断で入居者を締め出すことは、不法行為として損害賠償の対象になります。

過去の裁判例では、鍵交換によって入居者を締め出したオーナーが、慰謝料や損害賠償を命じられたケースがあります。場合によっては、住居侵入罪や強要罪などの刑事責任を問われる可能性もあります。

どれだけ腹立たしい状況であっても、法的手続きを経ずに強引な対応をすることは、オーナー自身にとって大きなリスクとなります。必ず正規の手続きに従って対応してください。

ドアへの張り紙や威圧的な言動

入居者の部屋のドアに警告の張り紙を貼ったり、威圧的な言動で退去を迫ったりすることも避けるべきです。このような行為は、入居者の名誉やプライバシーを侵害する可能性があります。

ドアに「ゴミを片付けろ」「退去しろ」などの張り紙を貼ることは、他の住人にも問題が知られることになり、入居者の名誉を傷つける行為と判断される可能性があります。名誉毀損として訴えられるリスクがあります。

また、大声で怒鳴る、何度も執拗に訪問する、脅迫めいた発言をするなどの行為は、威力業務妨害や脅迫罪に該当する可能性があります。録音や録画されていた場合は、オーナー側に不利な証拠として使われることもあります。

問題を指摘する際は、冷静かつ丁寧な言葉遣いを心がけ、感情的にならないことが大切です。対応に困った場合は、すぐに専門家に相談して適切なアドバイスを受けてください。

 

ゴミ屋敷トラブルを未然に防ぐ管理体制

ゴミ屋敷問題は、発生してから強制退去まで進むと、時間も費用も大きくなりやすいトラブルです。そのため、強制退去を検討する状況に至る前に、兆候を早期に把握して改善につなげる管理体制を整えることが、結果的に損失を最小化します。

ゴミ屋敷問題は、発生してからの対応には多大な費用と時間がかかります。そのため、問題が深刻化する前に早期発見・早期対応ができる管理体制を構築することが重要です。

日頃からの適切な管理によって、ゴミ屋敷の兆候を早期に察知し、大きな問題に発展する前に対処することができます。

定期巡回による早期発見

ゴミ屋敷問題を未然に防ぐためには、定期的な物件の巡回が非常に効果的です。共用部分の状態や外観をチェックすることで、問題の兆候を早期に発見することができます。

定期巡回では、ベランダにゴミが溜まっていないか、玄関ドア周辺に異臭がないか、窓から見える室内の状態に異変がないかなどを確認します。共用部分の廊下やゴミ置き場の状況も、入居者の生活状態を把握する手がかりになります。

巡回の頻度は、最低でも月に1回程度が望ましいです。問題の兆候が見られた場合は、頻度を上げて経過を観察します。巡回の記録を残しておくことで、後日の対応にも役立ちます。

自主管理をしているオーナーにとって、定期巡回は負担になることもあります。管理会社に委託することで、専門的な視点での巡回と早期発見が可能になります。

入居者対応の重要性

入居者との良好なコミュニケーションを維持することも、トラブル防止において重要です。問題が発生したときに相談しやすい関係性を築いておくことで、早期の対応が可能になります。

入居者が生活上の問題を抱えている場合、それがゴミ屋敷の原因となっていることがあります。高齢者の場合は身体機能の低下や認知症の兆候、一人暮らしの若者の場合は精神的な問題を抱えていることもあります。日頃からコミュニケーションを取っておくことで、変化に気づきやすくなります。

入居者からの相談や苦情には迅速に対応することも大切です。対応が遅れたり、放置されたりすると、入居者との信頼関係が損なわれ、協力を得られなくなる可能性があります。

24時間365日の入居者サポート体制を整えることで、緊急時にも迅速な対応が可能になります。入居者が安心して相談できる環境を整えることが、トラブルの早期解決につながります。

近隣トラブル発生時の初動対応

近隣住民からゴミ屋敷に関する苦情が寄せられた場合には、速やかに状況を確認し、記録を残したうえで入居者に改善を求めることが重要です。対応の経緯を文書や記録として残しておくことで、後の法的手続きにおいても客観的な資料として活用できます。

実務上は、オーナーや管理会社が苦情を把握していながら適切な対応を取らなかった場合、近隣住民から責任を問われる可能性も否定できません。そのため、初動対応の遅れは、トラブルを拡大させる要因になり得ます。

 

まとめ|ゴミ屋敷を理由に強制退去を進める際のポイント

ゴミ屋敷状態の入居者であっても、オーナーが一方的に強制退去させることはできません。日本の借地借家法では入居者の居住権が強く保護されており、強制退去を実現するには、法的に正当な理由と適切な手続きを踏む必要があります。

強制退去が認められるかどうかは、単に部屋が汚れているかではなく、用法遵守義務や善管注意義務といった賃借人の義務違反があるか、そしてオーナーと入居者との信頼関係が破壊されたといえるかが判断基準となります。悪臭や害虫の発生、近隣への被害、建物への損傷など、客観的な影響が重要なポイントです。

また、口頭や書面による注意、内容証明郵便での改善要求など、段階的に是正の機会を与えてきたかどうかも重視されます。いきなり契約解除や訴訟に進むと、退去請求が認められないリスクが高まります。

ゴミ屋敷問題の対応には、時間や費用がかかるうえ、対応を誤るとオーナー側が違法行為を問われる可能性もあります。判断に迷う場合は、早めに管理会社や専門家に相談し、状況に応じた対応を検討することが重要です。